days of cinema, music and food

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The Night Manager


Amazonプライム会員なので、無料でジョン・ル・カレ原作、スサンネ・ビア監督の英国スパイ・スリラー『ナイト・マネジャー』全8話を観てしまった。とても面白かった!


とある自責の念から半ば世捨て人のようになったホテルのナイト・マネジャートム・ヒドルストンが、英国諜報機関のスパイとして、因縁のある武器商人ヒュー・ローリーの組織に潜入していく、というもの。これはトム・ヒドルストンのアイドルドラマとも言える。硬派な表情から照れた笑顔まで見せてくれ、スーツ着て良し、ラフな格好して良し、脱いで良し、と各話で見せ場たっぷり。敵役ヒュー・ローリーは貫禄満点。皮肉な口調も英国アクセントもあいまって楽しい。この人、エマ・トンプソンと一緒に劇団を立ち上げた、元々コメディ出身だったのだね。ローリーの腹心を演じるトム・ホランダーも英国映画や『ブリジット・ジョーンズの日記』などでお馴染みの人で、コメディが上手い。本作ではローリーと共にユーモアは封印して、不気味に緊張感たっぷりに迫って良い。引き出しが多い役者たちを眺めるのって楽しいよね。


そしてエリザベス・デビッキ! 彼女は今までで一番綺麗に撮られていた。『華麗なるギャツビー』で「誰だ、この高身長美女は?」と驚いたが、『コードネームU.N.C.L.E.』の悪女も良かった。本作では演技の幅の広さも見せてくれるし、シンプルでも華麗な衣装の数々もあって本当に綺麗だった。ヒドルストンと並んで美男美女、眼福です。それにしてもヒドルストン、ローリー、デビッキと、身長190 cm前後の高身長キャストだな。


彼ら彼女らに比べて、ヒドルストンの雇い主である情報局員役オリヴィア・コールマンが、対象的に小柄で地味なルックス(実際には身長170 cmとあるので、周りが大男ばかりなのだが)。彼女もとても良かった。原作では男性らしいけど、こちらは良き人らしい夫を持つ妊婦。でも執念と地道な努力の、そして権力に負けない人でもある。観ていて応援してしまう。陰謀策謀うごめく組織内での彼女の策士振りも見ものとなっている。


事前には硬派なスパイスリラーを予想していたら、かなり通俗的でそれも良かったと思う。まぁ突っ込みどころはあるのだけど、スサンネ・ビアの演出もきびきびしているし、スリリングに盛り上げる。聞いた名前だと思ったら、『愛さえあれば』という愛嬌のあるコメディ映画の監督だった。この手のスパイ・スリラーでデンマークの女性が起用とは珍しい。でもそれが当っていたし、各話40分強なのでついつい続きを観てしまったよ。エジプトから始まり、スイス、スペインとロケ地が変わるのもスケール感があって良いね。


BBCのミニシリーズなのだけど、向こうの放送コードはどうなっているのだろう。デビッキ嬢含めてヌードもふんだん、死体の生々しい傷跡など、日本の地上波ではまず無理だろうし。英国って映画の表現規定が厳しい筈だから、かなり意外だった。


ともあれAmazonプライム会員ならば観て損なし。あぁ面白かった。


下記リンク先はタイトルデザイン。以前に観ていて面白いな、と思っていたらこのドラマのだったのね。ちゃんと英国調になっているし、何より美しいね。素晴らしいシークェンスに仕上がっている。


ナイト・マネジャー〔上〕 (ハヤカワ文庫NV)

ナイト・マネジャー〔上〕 (ハヤカワ文庫NV)