火の鳥(その2)
友人からお借りした手塚治虫の『火の鳥』、ようやく残りを読破しました。
今回読んだのは、「5 復活・羽衣編」「6 望郷編」「7 乱世編(上)」「8 乱世編(下)」「9 宇宙・生命編」「13 ギリシャ・ローマ編」です。
今回印象に残ったのは、フラッシュバック、フラッシュフォワードを効果的に使い、時空を前後させてスケールの大きな話を語った「復活編」、戦乱の世に流されていく木こりを主人公とした「乱世編」です。
この「乱世編」、実は火の鳥が登場しない異色編であるのですが、特に主人公である木こりの弁太は、心に残る登場人物です。
巨大な体躯に馬鹿力、単細胞でいたって大らかで気前の良い男は、平和な生き方を送ってきたのに、許嫁をさらわれて状況に流され流され、しまいには傭兵となっていきます。
自分の両親を殺した侍を憎む身である彼は、人殺しなんて忌み嫌っているのに。
流され流されて主体性はどうなんだ?と訊きたくなるような彼は、最後の最後に獅子奮迅の活躍をみせます。
・・・が、P.270のコマは衝撃的でした。
そして同時に思いました。
これはどこかで見たことある。
そうだジョン・ブアマンの秀作『未来惑星ザルドス』のラストだ、と。
そこで『火の鳥』も『未来惑星ザルドス』も、実は同じテーマじゃないかと気付きました。
それは、人は等しく死す、ということ。
善行を行う人だろうが、悪行を行う人だろうが、いつかは誰にでも訪れます。
そこから逃れるべく、抗うべくもがき苦しむ人たちが、この漫画には執拗に描かれます。
5月12日に書いた「(その1)」のように、無駄なくパワフル。
時空を超え、世界を超え、壮大なスケールで語られる物語には圧倒されました。
ここで描かれているのは、超然とした視点で描かれる生と死、そして卑小な人間の様です。
それがありとあらゆる手段で繰り返し繰り返し描かれるので、読んでいて重い気分にはなります。
重い気分になるのは、誰もが避けられない、誰もが普段目を背けている事実を描いているからでしょう。
その一方で、初期の作品である「ギリシャ・ローマ編」の可愛らしい絵柄を見ると、ほっとさせられます。
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