days of cinema, music and food

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The Dark Tower I: The Gunslinger


今月末に発売される『ダーク・タワーVI スザンナの歌』へのブリッジとして、『ダーク・タワーI ガンスリンガー』を読んでみました。
旧訳版を読んで以来ですから10年振り以上の再読になります。


後の話を知ってから、この第1巻を読むと、あんな事件やこんな人についての記述がごろごろと。
うーん、面白い。


いや、1冊の小説としての完成度は、スティーブン・キング自身も認めているように高いとは余り言えません。
文体も文芸調、後のベストセラー作家としてのキングの文体と違って読みにくいというのもあります。
主人公である最後のガンスリンガーことローランドの描写も、極めて感情移入しづらいというのもあります。
また、1つの物語とは言え、何年にも渡って雑誌に掲載された短編の寄せ集めだから、というのもありましょう。


それでも、第7巻の完結間際になってキング自身が手を入れたこともあって、また訳も旧訳の格調高いどこか文語調のものと違って「普通の」訳文になったこともあって、以前の版に比べて相当に読みやすくなっています。
また語りのリズムはいかにもキング。
無慈悲でハードボイルドな展開、キングらしい「運命論」と、冷たい手触りであっても、惹き付けてやまないものがここにあります。
長大なファンタジーを作ってやるんだという作者の思いが強い。


いつもの饒舌な前書きにある通り、本シリーズはトールキンの『指輪物語』とマカロニ・ウェスタンの『夕陽のガンマン』に強い影響を受けていますが、両者とは別の独自の世界になっています。
『指輪』の影響はあっても、キング自身が咀嚼し自己のものとしている為に、全く気になりません。


それにしても、ローランドが若き日のクリント・イーストウッドに思えてきました。
長身痩躯、無口なガンマン。
意外にイケるかも、このイメージ。


神を信じているのだけれど、神は無慈悲なものであるという信念が強いのも、キングらしいですね。
信じていても醒めているというか。
ザ・スタンド』もそうだったし(これも<中間世界>ものですな)。
欧米人の信仰の一端を知る上でも興味深い本です。
ま、そんな堅苦しいことを言わなくても、異色アクション・ファンタジーとして楽しめますけど。
エンジンが掛かり始める第2巻も、新訳で再読したくなってきました。


ダーク・タワー1 ガンスリンガー (新潮文庫)

ダーク・タワー1 ガンスリンガー (新潮文庫)