days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

The Prestige


クリストファー・プリーストの『奇術師』を読みました。
19世紀末に活躍した2人の奇術師は、似たようなトリックで人気を博した者同士。
互いに憎しみ合っていたその謎を、それぞれ子孫が協力して解き明かそうとする、という小説です。


Prestigeは通常「威光」「名声」といった意味で使われますが、巻末の解説によると、100年くらい前には「幻惑」「奇術」「偽者」などという意味もあったそうです。
なるほど、うまいタイトルです。
これが邦題となると難しいですね。
「奇術師」・・・うん、苦しいけれどよしとしましょう。


プリーストの作品は初めて読むのですが、これが読書ならではの喜びを与えてくれる作品でした。


小説は実に凝った構成。
しかも入れ子構造になっています。
5つある各章は全て日記形式で書かれ、それぞれ各人からの視点から描かれています。
同じ事件も書く者によって内容が微妙にずれているのが面白い。
小説ならではのトリックと語り口によって、迷宮にいざなわれます。


私は日記形式や一人称の小説が余り好きでないのですが、何しろ一区切りが非常に短い(2〜3行程度のときもあります)ので、「次はどうなるのだろう」と興味を持ってすらすら読み進めることが出来ました。
これも語りのリズムやテクニックが良いからなのでしょう。


使われるトリック、仕掛け、ガジェットの類に事欠かず、終盤明らかになる真相はこう来るか、と思わせる大技・小技の連打で予想以上に様々な要素が散りばめられ、結末に至ってはまさかこんな話だとは・・・と唖然とさせられます。


これは事前に予備知識や解説文などから情報を仕入れないで、真っさらな状態で向かうのが良い。
そうすれば、小説ならではの世界に浸って楽しめることと思います。


製作中の映画はクリストファー・ノーランが監督、キャストにヒュー・ジャックマンクリスチャン・ベールマイケル・ケインデビッド・ボウイなどを揃えているそうですが、さて日本ではいつ公開されるのか。
来年くらいには観られると良いですね。