days of cinema, music and food

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バトル・オブ・ブラジル


ジャック・マシューズによる映画ルポルタージュの名著『バトル・オブ・ブラジル』を読了。
ダゲレオ出版から出ていたものです。
読み返すのは十何年振りでしょうか。
この本、以前も持っていたのですが、誰かに貸してそれっきりで、長年行方不明になってのです。
それが近所のブックオフで見付かる幸運。


さて内容は、テリー・ギリアムの『未来世紀ブラジル』を巡る、ギリアムとユニヴァーサル社長シド・シャインバーグの闘いを描いたもの。
内容が暗すぎる、上映時間が長過ぎるとするユニヴァーサル側と、個人のヴィジョンを何としても守ろうとするギリアム側の闘いが、熾烈に繰り広げられ、面白い。
管理社会の圧制に対抗する個人対巨大権力という、映画の内容そのままをなぞらえたかのような事件が、当時は業界で話題を呼んだようです。


契約通りに短くしたにも関わらず、内容の変更まで手が加えられそうと知ったギリアム側の対抗手段が面白い。
モンティ・パイソン一派のギリアムですから、嫌がらせも含めたあの手この手のゲリラ作戦を行います。


巨人シド・シャインバーグとしては良かれと思ってしたのでしょうが、後世にまで残る事件の当事者になろうとは、思いもしなかったに違いありません。


この本はビジネス最優先のハリウッドを牛耳っているのは、実はごく一部のエリートであり、彼らの主観でかなり決められてしまうという実態をあぶり出しています。


アメリカのクライテリオン・コレクションDVDに収録されているのは、10分短くてオープニングとエンディングの印象が国際版とかなり異なるというアメリカ版と、「愛は全てに勝つ」90分のシャインバーグ版。
日本版DVDには、50分も短くされたシャインバーグ版が収録されていないのですよね。
私が劇場で観、LDで持っているのは国際版。
アメリカ版とシャインバーグ版も、機会があれば観てみたいものです。