days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Twisted


お気に入り作家ジェフリー・ディーヴァー初の短編集。
私がこの作家を知ったのは、ご多分に漏れず大きな話題となった大傑作『ボーン・コレクター』でした。


そのときの感想はと言うと、とにかく面白い!


よくある連続殺人鬼対探偵という手垢に塗れたプロットながら、探偵を事故によって首から下が動けない鑑識の天才という設定にしたところが秀逸でした。
動くのは刑事たちで、彼=リンカーン・ライムは天才的頭脳を駆使して、連続誘拐殺人鬼ボーン・コレクターを追い詰めます。
不必要な死人を出すこと無く次から次へと起こる事件を解決するリンカーンらと、彼らに挑むボーン・コレクターとの頭脳戦は迫真のタッチ。
お陰で睡眠不足に陥り、会社帰りの帰路も暗い夜道を読書しながら歩いたものでした(危ないから真似したダメですよ)。


映画版は原作を知らなければ楽しめたかも知れませんが、大傑作の小説に比べるというのは酷というもの。
死者数も原作より多いのに、スリリングさで映画は負けていました。


リンカーン・ライム・シリーズや他の長編に見られるように、ジェフリー・ディーヴァーの長編諸作はジェットコースターのような展開と二転三転する捻り、そしてハッピーエンディングが身上です。
その彼の短編集となる本作は、原題は『Twisted』と言います。


そう、捻って読者を驚かせるサーヴィス精神満点の、実にディーヴァーらしいタイトルです。
収められている16作品はどれも捻りを効かせたもの。
絶対何かあるだろうと疑心に駆られるという欠点もあるし、出来には多少むらがあるものの、どれも楽しませてくれます。
著者前書きにもありますが、長編ではハッピーエンディングを意識していても、短編ではそれに囚われていません。
その為か、長編よりも伸び伸びしているように思えました。
捻りが目立ち過ぎるイヤらしさを感じる方もいらっしゃるかも知れませんが、人情もの系の話ならばそれも薄れます。
私は特に、上質な捻りが心地良く着地する『ノクターン』が気に入りました。


リンカーン・ライムとアメリア・サックスらが活躍する『クリスマス・プレゼント』も面白い。
後半、「ほう、そうまとめるか」と思わせていきなり急転直下の展開になる辺りなど、ディーヴァーらしい。


長編作家としてだけではなく、短編ミステリ作家としても中々の腕前を披露するとは意外です。
どれも短い話ばかりですので、通勤時間でも区切り良く読み易い。
お勧めの短編集です。


クリスマス・プレゼント (文春文庫)

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