days of cinema, music and food

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Grindhouse


六本木まで『グラインドハウス USA公開バージョン』を観に駆け付けました。
何せ今月一杯までの公開なので、文字通りの駆け付け。
朝9時半からの上映だというのに、場内は好きモノども(無論、私も含みます)で結構な入り。
パンフレットも上映後は完売となっていました。
デス・プルーフ in グラインドハウス』と『プラネット・テラー in グラインドハウス』のバラで上映のときは、また発売されるでしょう。
バラ公開版は観に行かないけれど、パンフは劇場で買わなくては。


Grindhouseとは、B級エログロ映画をぶっ続けで2本立て3本立て上映していた映画館のことを言うそうです。
この『USA公開バージョン』はロバート・ロドリゲスクエンティン・タランティーノのそれぞれの長編『Planet Terror』及び『Deth Proof』を連続上映し、冒頭及び長編の間に偽の予告編を挟んだもの。
本来あるべきGrindhouseの形と言えそうです。
さらには役者は共通しているところもあるし、同じ役者が微妙にずらした役柄を演じているものもあります。
つまりは191分まるごとで1つの世界。
バラで公開されたら、本編ぶっ続け上映と、いかがわしさ満点の予告編が無いだけで、独特の濃い雰囲気が減り、かなり雰囲気が違うものになるのではないでしょうか。
なにしろどちらの映画も登場する女性は、職業がゴーゴーダンサーだろうが、医者だろうが、皆ホットパンツかミニスカート、タンクトップ姿ばかりなのですから。
タランティーノなんてお尻と生脚ばかり追い掛けているし(笑)。


そんな意味でもこの『USA公開バージョン』は、全部ひっくるめて1本として観るべき映画であり、この手の映画が好きな人ならば必見の作品となっています。


冒頭のダニー・トレホ主演の『マシェーテ』予告編(独立した映画として製作されることになったそうですが)も楽しく、その後に続くロドリゲス編『プラネット・テラー in グラインドハウス』はSFゾンビ映画
細菌兵器の漏洩により、田舎町であるテキサス州オースティン(ロドリゲスの本拠地)が怪異に飲み込まれます。


とにかく過剰なまでの血しぶき、血みどろ。
高度な特殊メイクなのに、出血量が異常に多いので超残酷なのに笑えます。
もっとも、笑えるのはこの手の映画に耐性のある人でしょうが。
極端な状況に極端な人物造形、極端な描写。
色褪せたり傷だらけのフィルムを模したマンガちっくな世界で、ロドリゲスはやりたい放題しています。
過去の映画へのオマージュも満載。
シリアス・コミック調の『シン・シティ』という彼のキャリア最高の力作がある一方、おふざけコミック調のこちらもやはりキャリア最高作となりました。
どちらも共通点はきちんとした構成がされた脚本です。
もっとも、こちらはかなり現実離れした、ある意味狙った作品な訳ですが、ロバート・ロドリゲスはコミック世界がお似合いですね。


その一方、ロドリゲス作品につきまとう「軽さ」も全開なので、観ている間は面白くとも印象には残らない欠点もあります。
が、Grindhouse映画としては、これもまた正しい姿なのでしょう。


泣き虫ヒロイン役、ローズ・マッゴーワンが最高です。
好演しているし、役柄も強烈。
彼女の代表作になることでしょう。
シン・シティ』に続いて登場のマーリー・シェルトンも良いし、マイケル・ビーントム・サヴィーニなど、コミック演技が快演に繋がっています。


間にまた笑える予告編3本が面白く、作品によっては日本版独自の字幕あります(笑)。
イーライ・ロスの『感謝祭』の音楽は、ジョン・ハリソン作曲の『クリープショー』からの抜粋でした。
ご丁寧にも飲食店の宣伝を挟み、タランティーノ編『デス・プルーフ in グラインドハウス』の始まり。
運転している自分は決して死なない耐死仕様(Deth Proof)の車で女性たちを血祭りに上げる、狂ったスタントマンが悪役の一編です。


あちらが如何にもロドリゲス風ならば、こちらはまた如何にもタラ風。
主人公はほぼ女性ばかりで、全編の殆どをガール・トークで占めています。
車での移動中や食事中の会話の延々と続く会話場面で、『レザボア・ドッグス』を思い起こさせます。
それが中盤のえらいショッキングな場面で寸断され、いきなりホラーになります。
が、またガールトークが延々と。


つまりはタラらしくダラダラした会話が続く映画という訳。
これを楽しめるかどうかで、面白がれるか退屈がるか、かなり観方が分かれるでしょう。
私は結構楽しめましたが、ツラい人には本当にツラいかも。
しかし終盤に用意されているカーチェイス場面は中々迫力があります。
60セカンズ』(台詞にも出て来ました)や『ワイルド・スピード』などといったCGで加工した偽カーチェイス映画と違い、こちらは本当に人が車を運転して、それをカメラが追うもの。
1970年代に流行った映画そのものな訳ですが、この映画が面白いのは後半いつのまにかラス・メイヤー映画の世界になってしまっていること。
爆笑に次ぐ爆笑に続きに追い討ちを駆ける、さらなる大爆笑のラスト。


活き活きとした女優陣も良かったのですが、特筆すべきは珍しく悪役のカート・ラッセル
前半のクールな悪役も良いのですが、後半の爆笑の連続は彼のお陰によるところが大きい。
いやいや、カート・ラッセルをこんな風に生かすなんて、さすが役者の新たな魅力を引き出すタランティーノ
タランティーノは大長編よりも、こういった小品の方がシマって良いのではないでしょうか。
これもまた、彼の代表作に入れても良い好編です。


カート・ラッセルとの会話に登場する「ビッグ・カフナ・バーガー」は、『パルプ・フィクション』のサミュエル・L・ジャクソンジョン・トラボルタの喋りに登場したハンバーガー屋ですね。


映画はどちらも古びた1970年代調を模したルックスですが、携帯電話も登場するし、特撮やメイクにも力を入れた最新版。
よって製作規模も含めて、本来のチャチなGrindhouse映画とは違う筈なのですが、今や中堅どころとなった個性派監督作品に、スターたちの嬉々とした快演も楽しむのが筋です。
繰り返しますが、これはある意味必見の映画です。


DVD及びHD盤では、是非ともこの『USA公開バージョン』で出してもらいたいものですが、北米版の仕様がバラバラ盤で出すので、日本ではそれも難しいのかな・・・。
とまれ危うくオクラ入りとなりそうだったのに、配給を決断したブロードメディア・スタジオの英断に拍手!