days of cinema, music and food

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American Gangster


大好きなリドリー・スコットの新作『アメリカン・ギャングスター』の「ギャングスター」は、ギャングのスターではなく、ギャングスタ・ラップなどのギャングスタ
「STAR」じゃなくて「STER」ですからね。
まぁでも、邦題としては「ギャングスター」の方がカッコ良いですからね。


映画は1960年代末から1970年代半ばまでを主に描いていて、ラストに1990年代初頭を持ってくるというもの。
ハーレムを牛耳って自らの帝国を着々と作り上げていた初の黒人麻薬王フランク・ルーカスと、高純度のヘロインの元締め追う捜査官リッチー・ロバーツを並行して描いています。
2人が交錯するのは映画も半ばになってから。
ここから、ロバーツがルーカスに的を絞って追い詰めて行く様が前面に出て来ます。


ということで、映画の前半ではルーカス役デンゼル・ワシントンが、後半ではロバーツ役ラッセル・クロウが目立っています。
元々攻撃的な演技が上手い2人ですから、上り詰めていく様を演じているときの方が輝いています。
良かったのは役者全般に言えています。
汚職警官役ジョシュ・ブローリンは主演作『ノーカントリー』と似たような口髭&長めのヘアスタイルで、強烈な印象を残します。
マフィアの顔役アーマンド・アサンテはヴェテランの余裕だし、ルーカスの母親役ルビー・ディーは出番が短いのに心に残ります。
勢いのあるキウェテル・イジョフォーなぞ『インサイド・マン』でもワシントンの部下役だったのに、本作では弟役。
ワシントンの貫禄に比べるとまだまだヒヨっ子てな感じでしょうか。


組織を身内で固めて家族を大切にしようとするルーカスと、女たらしで私生活は破綻しているロバーツというコインの表と裏のような男たち。
彼らを骨太な演出で見せたリドリー・スコットの演出は、派手なアクションや暴力場面を抑え、自らの目標に突き進むドラマを描き出します。
映像派として鳴らすスコットにしては画面も2.35:1でないのも意外な驚きでしたが、何よりも題材に沿った大人の演出が目を引きました。


スコットがお手本にしたのは、恐らくはウィリアム・フリードキンの傑作『フレンチ・コネクション』でしょう。
序盤にもドイル刑事が抑えたフレンチ・コネクション云々という台詞もありましたが(ドイル刑事は同作の主役)、車ならぬ○○○を解体して隠されたヘロインを探し出そうとする場面など、あの名作を彷彿とさせます。
その密輸の手法が謎なのが終盤のサスペンスを盛り上げているのに、各所で既にネタバラシされているのはちょっと残念です。


撃ち合いや殴り合い、過剰な暴力を期待するとあてが外れるでしょう。
しかい、がっちりした大人の男の犯罪ドラマを観たいのであれば、お薦めの秀作です。