『ジャーナリズム崩壊』
今一番気になっているジャーナリストと言えば、上杉隆。
『週刊文春』での政界に対する容赦の無い文章や、3月末で終了したTBSラジオ『ストリーム』でゲストで登場していたのが、印象的でした。
その彼の刺激的なタイトルの本を読み終えました。
ニューヨーク旅行の際に新聞を買った際、まず驚いたのはその分厚さでした。
1つの分野ごとに束になっているのですが、その1つ1つの束が厚いのです。
夕刊が無いというのもありましょうが、さらに1つ1つの記事の長さにも驚かされます。
あちらの新聞は速報性よりも、情報収集した結果の分析などがメインだと、本書で知りました。
私は朝日新聞を取ってはいますが、昨今の偏向報道、誤報道反省の少なさ、意味の無い「政府高官」などという匿名性など、朝日に限らず主流マスコミには、ほとほとうんざりしています。
とは言え、新聞を読むのも情報収集の1つ。
ネットでのニュースなども含めて、1つの事件を複眼的に見るのは必要です。
これは飽くまでも感覚ですが、立読みで済ましているものの、政界関係の記事では週刊誌の方が切れ味鋭いものが多い気がします。
新聞よりもしがらみが少ないというのもあるのかも知れません。
もっとも、先日の『週刊新潮』の朝日新聞阪神支局襲撃嘘っぱち報道の記事など、ダマされた自分が被害者だとばかりで、これまた自らの罪の認識の甘さにげんなりはしますが。
学生時代、私がなりたかった職業と言えば、法律関係者、考古学者、それに新聞記者でした。
新聞記者とはジャーナリスト。
自分が知りえた情報を世の為に役立ててもらう仕事は、非常にやりがいがあるように思えました。
まぁ現実には、IT関係という全く違う職業に就いているのですが、それでも現状のマスコミに対しては興味もあるのです。
前記『ストリーム』登場の際、小西克哉の質問に対して述べていたエピソードが、幾つか本書にも記載されています。
NHK元会長海老沢へのインタヴューの際における、NHK職員らのヤクザまがいの言動とか、日本記者クラブが同クラブに所属していないジャーナリストを排斥すべく、卑怯な手を使うとか、これが本当に日本の主流ジャーナリズム界とは、とほとほと情けなくなります。
もっとも、ジャニーズ事務所への過度の遠慮なども含めて、権力にべったりへつらう主流メディアの現状を鑑みれば、本書に書かれている事も全く納得出来る、というのが情けない限り。
完全なる客観報道など無い、という海外ジャーナリストたちのの常識が、日本の非常識でもあるなど、よくよく考えれば当たり前なのに、目から鱗が落ちる思いもしました。
本書は至極真っ当なジャーナリズム論の本であるのに、これが異端となる世相がおかしい。
「信じたいのであればまず疑ってかかれ」という言葉を残したのは確かカール・セーガンだったと思いますが、それを常に肝に銘じるのも忘れてはなりませぬ。
必読です。
- 作者: 上杉隆
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2008/07/01
- メディア: 新書
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