Duplicity
今日は映画の日でしたので、ハシゴして2本観て来ました。
まずは『デュプリシティ 〜スパイは、スパイに嘘をつく〜』。
公開初日の朝9時45分からの回、シネコンの小屋は40人程度の入りでしたでしょうか。
スパイ映画は数あれど、産業スパイを描いた映画は珍しい。
元MI6のクライヴ・オーウェンは、かつて元CIAのジュリア・ロバーツに一杯食わされたことを根に持っています。
そんな彼が化粧品会社の情報戦の任務に就きます。
このゴールデン・ウィークはクライヴ・オーウェンづいているのですが、今回は珍しくムサくないクライヴの出演です。
無精ヒゲはシャットアウトとばかりに、こざっぱりしていて、スーツもビシと着こなしています。
上背があって細くて手足が長いので、見栄えがしますね。
でも「根に持っている」というのが、如何にも彼らしくてちょっと可笑しい。
女たらしが得意戦法なのに、冒頭でロバーツに引っ掛かってしまう脇の甘さがご愛嬌というか。
一方のジュリア・ロバーツは大スター然とした貫禄があります。
彼女も上背があるので、オーウェンとの見かけの相性は宜しい。
しかし渡し個人が彼女に興味が無いからなのか、どうもこの2人には化学反応を感じないのです。
相性が良いんだか悪いんだか、ちょっと腑に落ちないというか。
とまれロバーツ演ずるヒロインの方が、オーウェン演ずる元MI&よりも一枚上手なのは明らか。
食えない2人が主人公なので、果たして本当に騙されているのは誰なのか、という興味で終盤まで見せます。
そう、産業スパイ戦のアクドイ様がリアルに描かれるのも見もの。
脚本と監督はトニー・ギルロイ。
ジェイソン・ボーン・シリーズのリサーチ中に、元スパイたちが今は民間組織で働いていることを知って、この世界に興味を持ったようです。
スパイの手段はかなり現実に即しているとか。
敵対する企業のCEOがポール・ジアマッティとトム・ウィルキンソンなので対照的。
冒頭タイトルバックでの、雨中の空港での掴み合いのスローモーションが可笑しかったです。
片や生意気な登り竜、片や重鎮といった雰囲気ですものね。
ウィルキンソンはギルロイの監督デヴュー作『フィクサー』でも重要な儲け役が記憶に新しいですが、今回もギルロイ作品に登板。
この2人は最近でもTVドラマで共演していたそうですが、そういえばジアマッティとオーウェンは『シューテム・アップ』で共演、オーウェンとロバーツは『クローサー』で共演していましたね。
音楽は『フィクサー』に続いてのジェームズ・ニュートン・ハワード。
珍しくリズミカルでノリの良いファンク系の楽曲を付けていて、後半ではギターもフィーチャー。
このように音楽や冒頭など、あちこちコメディっぽい箇所はあるのですが、どうにも弾みません。
前作もそうでしたが、ギルロイという人は演出が生真面目過ぎるのではないでしょうか。
主人公2人がプロのスパイなので、恋愛も本物なのかどうか、という疑心暗鬼にかられるなどという題材も含めて、話自体もラストも皮肉で面白い。
脚本家としては相当に優秀だと思いますが、この映画の演出はしゃれっ気のある人に任せた方が良かったと思いました。