days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Slumdog Millionaire


映画の日の2本目は、『スラムドッグ$ミリオネア』です。
13時35分からの回、シネコンの中でも大き目の小屋は8割の入りでした。
映画の日アカデミー賞受賞の相乗効果でしょう。


まず驚きは、劇中の台詞の半分以上が英語であること。
ヒンズー語部分は英語字幕が出るのですが、その出し方がお洒落で今までに観たことの無い方法でした。
こういうやり方もあるのか、と感心です。
無論、お洒落なのは映像や編集もそう。
MTVタッチの映像をぱぱぱっと繋ぎ、全体にテンポ良く物語を語って行きます。
この手腕は見事でしょう。
そして圧倒されるのはインドのパワー。
貧しくて悲惨な日常と、子供にとって余りに過酷な日々を描いているにも関わらず、希望を失わず、へこたれず、突き進む。
善悪の手段は問わずに生き抜こうという意思が凄いのです。
それにしても、ここで描かれている少年ギャングや子供を使った犯罪など、悲惨そのもの。
シティ・オブ・ゴッド』を想起させました。
何とか真っ当な道を進む主人公と、ギャングスタの道まっしぐらの兄。
その描き方も興味深い。


そもそもスラム育ちの主人公が、何で『クイズ$ミリオネア』の最後まで勝ち進んだか、という観客を引っ張る物語からして面白い。
そしてメインとなるプロットは、主人公が幼馴染みの女の子に抱く純愛。
何とか彼女を救い出せないか。
この想いも単純で分かりやすい。
これが観客にとっての清涼剤となっています。


このように内容びっしりなのに、過去と現在を交錯させて観客を混乱させないダニー・ボイルの話術が光ります。
しかも上映時間は2時間。
凡庸な映画ならば、それこそ2時間半掛けて描く話でしょう。
それをここまでハイスピードで疾走するのですから、飽きる暇もありません。
また、スコープの横長構図を使い切った映像設計も見事。
構図がいちいち決まっていて気持ち良いです。


しかしこれがアカデミー賞作品賞、つまり年間ナンバー1の作品だ、と思って期待すると当てが外れる人も多いかも。
まぁでも、アカデミー賞はハリウッド業界のお祭りなので、そう真剣に考えることも無いので、指標の1つ程度に思うので十分。
面白さとパワーに圧倒され、内容もハラハラドキドキ、最後はミュージカルまであってサーヴィス精神満点なのに、後には余り残らない。
これもスピードに伴う軽さゆえでしょうか。


エンドクレジットまでインドテイスト爆発でお洒落という、徹頭徹尾スタイリッシュな作品でした。