Vicky Cristina Barcelona
ウディ・アレンの新作『それでも恋するバルセロナ』公開初日に行って来ました。
18時50分からの回は20人程の入り。
女性客の方が多かったのは、作品イメージの売り方のお陰か。
90分強の短い上映時間の間、恋と滑稽さを堪能しました。
原題のヴィッキーを演じるのはレベッカ・ホール。
今年は『フロスト×ニクソン』で好演していましたが、こちらはやや堅物の婚約者アリの学生役。
ヴィッキーとバルセロナにバカンスに来たのが、親友のクリスティーナで、演ずるのはスカーレット・ヨハンソン。
自分探しをしている恋に奔放な女性です。
彼女らを虜にするのが、ハビエル・バルデム演ずる画家のホアン。
ところがホアンには元妻マリアがいました。
ホアンを刺した激情家の彼女は天才画家。
こちらはペネロペ・クルスが演じています。
俳優はパトリシア・クラークソンやケヴィン・ダンも含めて皆達者というか、好演というか、役に合っていたのですが、特にペネロペの破壊力は凄い。
前半はレベッカ・ホールとヨハンソンが目立つのに、ペネロペが登場すると場をさらいます。
特にヨハンソンなぞ小娘にしか見えません。
これは意図的なのでしょうが、キャスティングも上手いですね。
スペイン語の早口は騒々しいものですが、ペネロペとバルデムの大喧嘩など凄い凄い。
三角関係ならぬ四角関係をさらり描くのがアレン。
アレンならではの複数人物が同時に喋る趣向が、より迫力満点というか大袈裟に感じられてこれは面白かった。
話の内容は結構きわどく、予想外の展開もオカシイのですが、全体にロマンティックでありながら恋に翻弄される人間のおかしみ、滑稽さ前面に出るのが、この監督・脚本家らしい。
おかしみを増しているのが冷徹なナレーションで、ラスト近くのひと騒動では場内爆笑でした。
全体にのびのびしているのは、南スペインの空気にアレンが当てられたからでしょうか。
数年前に旅行したときのことを思い出しました。
全体にアントニオ・ガウディの建築物がフィーチャーされていて、観光映画の気分も濃厚。
バルセロナは建築物好きにはたまらない都市ですからね。
行ったことのある場所が幾つか出て来たので、それだけでも楽しい気分。
それに「そうそう、夜遅くまでレストランが開いているんだよねー」など、楽しい思い出が蘇って来ます。
南スペインは美味しいし、人々も解放的だし、楽しかったなぁ。
既に枯れた演出で男を描くクリント・イーストウッドに対し、70過ぎても男女の色恋沙汰を描くアレン。
相変わらずタイトルは黒地に白文字でスクロールせず、音もモノーラルという頑固振りも変わらず。
これからも楽しみを提供してくれるでしょう。