days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

graphic novel "300"


『バットマン:ダークナイト』読後に持った感想もあって、その直後に注文していたのがこれ。
同じくフランク・ミラー作・画、リン・ヴァーリィ彩色のグラフィックノヴェル『300』です。
10月初旬に注文したのに、アマゾンから到着したのは昨年末。
出版元も含めて在庫が少ないのでしょう。
やはりアメコミは出版直後に購入するのが確実です。
その本書をようやく読んでみました。


大判のハードカヴァー、版サイズが30.5 x 24という変形。
全88ページ、スリップケース入りの豪華本です。
あっという間に読める内容に比して3,000円近い価格からすると随分と高価ですが、大きなサイズとオールカラーでもって、満足度は高い。
無論、内容も伴っています。


フランク・ミラーらしく、男は目的に殉じることをいとわない。
本作の主人公はスパルタ王レオニダスですが、侵略者たるペルシア王クセルクセスに敢然と立ち向かいます。
100万のペルシア軍に対し、スパルタの数300人。
最初から死ぬのを覚悟でテルモピュライの戦いに挑みます。
「スパルタは決して屈しない」、と。
思えば、『シン・シティ』のマーヴは「仇は討つ」。
ダークナイト・リターンズ』のバットマンことブルース・ウェインは、「悪に屈しない」。
至極単純な、しかし本人にとっては崇高な目的のために、文字通り命を賭します。
ナレーションも相まってナルシスティックで単細胞と言えばそれまでですが、同時にそれはカッコ良さの証しともなり得る。
読み手によっては噴飯ものか、素直に感動するか、意見が分かれるかも知れません。
しかしミラーの作品に顕著なのは、作者が主人公に相当感情移入しているにも関わらず、同時に醒めた目線も注いでいること。
マーヴの末路の冷徹さ。
ブルース・ウェインの過激さ。
ここら辺に出ているように思えます。
本書も同様。
無茶な作戦は当然の帰結を呼ぶのです。


ザック・スナイダーの映画版『「300」』は、本書をかなり膨らませているのが良く分かります。
レナ・ヘディが好演していた、史実では賢人とされた王妃ゴルゴなど、原作では名前も出ないし出番も1-2ページあるかないか。
議会の様子も映画版だけの要素です。
原作では首が飛んだり手足が切断されたりは全く無いですからね。
映画版でも強烈だった、隊長の息子(ミヒャエル・ファスベンダーが演じていました)の死も、原作ではナレーションで語られるのみ。
また『ウォッチメン』同様に、エログロはスナイダーの趣味だというのもよく分かりました。


本書はコミックブックとして出版された際は、全て見開きとしてレイアウトされていたのを、グラフィック・ノヴェルとして本書にまとめられた際に、片方ずつのページに収められたそうです。
ミラーらしい大胆なコマ割りと太いタッチの画と、ヴァーリィの茶系のカラリング、大きなサイズでもって、迫力満点に読めます。


300(スリーハンドレッド) (Shopro world comics)

300(スリーハンドレッド) (Shopro world comics)