days of cinema, music and food

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graphic novel "Batman: Year One and Year Two"


グラフィック・ノヴェル『バットマン イヤーワン/イヤーツー』を読みました。
以前に別々に出ていたものの合本で、これはありがたい。
このところバットマンづいていますが、これもアメリカン・コミックもしくはグラフィック・ノヴェルの翻訳版がどんどん出てくれるから。
いやいや、全くありがたいものです。


『イヤーワン』はフランク・ミラー原作、デヴィッド・マッズケリ画。
フランク・ミラーが画かと思っていたら原作のみで少々残念。
しかしマッズケリの画も中々好みでしたので結果オーライです。
ミラーらしく少々ナルシスティックなト書きが多いのも特徴で、画は別人でも紛れも無くミラー作品でした。


内容も面白い。
正義感の強いジェームズ・ゴードン警部補がゴッサム・シティに左遷され、汚職にまみれた警察内で不利な状況になりつつも、徐々に頭角を現していく様。
13年振りにゴッサム・シティに戻って来たブルース・ウェインが、闇の自警団として活動を開始し、バットマンとなっていく様。
この2人がシンクロしていく様をハードボイルドに活写してスリリングですし、共に重厚なドラマとなっています。
ラストも余韻が残って素晴らしい。
そう、これは映画『バットマン ビギンズ』の元ネタの1つともなっていた作品なのです。映画版は本作を上手く取り入れていたことも分かり、かなり興味深いものとなっていました。


『イヤーツー』は原作がマイク・W・バー。
以前に邦訳が出たときは、第2話まで出て打ち切りになったとか。
実質、本邦初公開と言えましょう。
こちらはゴードンの陰が相当に薄くなり、ブルース・ウェインバットマンが主人公となっています。
敵には犯罪者を殺戮していくリーパーを配し、バットマンとの宿命的な運命の交錯を描いています。


第2話からペンシラー(鉛筆書きによる下絵担当)がアラン・デイヴィスからトッド・マクファーレンに交代したのと、終幕ではマクファーレン自身がインカー(下絵をインクでトレースする担当)も兼任した為に、画の印象がころころ変わってしまっています。
これがどうにもまとまりの無い印象を生んでしまいました。
また、内容自体も『イヤーワン』とは別方向になっており(マイク・W・バー自身によると、そもそも同じ土俵に上がる気は無かったようです)、登場人物を多く配したドラマになっているものの、やや起伏に乏しく散漫な印象を受けます。
自分の両親を殺害したジョー・チルと組む羽目になるバットマンなど、皮肉で面白い設定もあるのですが。
尚、ヒロインのレイチェルは『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』に受け継がれていますね。


後に『スポーン』などで大人気となるトッド・マクファーレンの画は、鋭利で大げさなマントの描写が『スポーン』そのまま。
バットマンが『スポーン』の原型の1つでもあったというのは、面白い発見でした。


『イヤーツー』の後日談と言うべき『フル・サークル』も収録。
こちらはマイク・W・バー原作、アラン・デイヴィス画と『イヤーツー』第1話のコンビが復活していますが、内容はそんなに面白くは無かったです。
題名通り大団円かと思いきや、そうでもない後日談でしたし。
これも悪役の基本設定が興味深かったのですが。


3千円以上もする高額書籍なので、傑作とも言うべき『イヤーワン』のみ目当てだと少々高く感じるでしょう。
しかし私のようにバットマンを読みたいと思う向きには、270ページもの分厚い本ゆえ、それなりに納得出来ました。
以前出ていた『イヤーワン』単品はバカ高くなっているようですしね。
バットマン・ファン、アメコミ・ファンには面白いと思います。


バットマン イヤーワン/イヤーツー

バットマン イヤーワン/イヤーツー