"Chasing the Dime" and "The Black Echo" by Michael Connelly
マイクル・コナリーを初めて読んでみました。
ビル・クリントン元大統領が、「愛読している」と言ったミステリ作家です。
私とコナリーとの接点は、クリント・イーストウッドが監督・主演した『ブラッド・ワーク』を観に行ったときくらい。
有名な作家ですが、シリーズものの常として一見さんには敷居が若干高く感じられるので、今まで躊躇していました。
それでも興味があったので、コナリーには珍しくノン・シリーズなので気軽に読めるのではと、まず手に取ったのは『チェイシング・リリー』でした。
ITベンチャーの社長でありナノテク博士のピアスの新居に、「リリーはどこだ?」という電話が掛かって来ます。
単なる間違い電話かと思いきや、同じような電話が何本も掛かって来ます。
ネットで調べると、リリーはすこぶるつきの美女でコールガール。
彼女の電話番号がピアスの新居の電話番号と同じだったのでした。
しかも、どうも行方知らずらしい。
謎の美女に魅せられるように、ピアスは彼女の行方を探し求めますが…
前半はそれこそ息もつかせぬ展開で、どんどん引き込まれて行きます。
今やミステリ小説の登場人物も、ネット検索をするのが当たり前の時代なんだなぁと、先日読んだ『ミレニアム』シリーズを思い出したり。
ピアスが非常に頭の切れる学者ということで、僅かな手掛かりから調査を進めていく様が読んでいて痛快です。
しかし素人ゆえ、とっさの状況に誤った判断を下したり、暴力沙汰には弱かったり。
探偵が痛い目に遭うのは、ミステリ小説のそれもハードボイルド小説の常套ですね。
後半にはピアスがリリーを探し求める理由も明らかになります。
その後半、テンポがいささか落ちるのは、ピアスの会社での特許競争の話に重点が置かれるようになるから。
普通だったらスポンサーに対するピアスの長弁舌も短くしてしまうものなのに、長々書いているのが逆に面白い。
これがゆったりとスリルを盛り上げているのは確かです。
しかし真犯人も含め、全体に話をこさえ過ぎた感があり、かなり軽い印象が残りました。
- 作者: マイクルコナリー,Michael Connelly,古沢嘉通,三角和代
- 出版社/メーカー: 早川書房
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- メディア: 文庫
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それでも読んでいる間は面白かったので、次なる本に進んでみた次第です。
続けて読んだのが、ハリー・ボッシュものの第1作目『ナイトホークス』でした。
こちらは読後の満足感が得られたミステリ小説です。
ハリウッド署の刑事ボッシュの本名は、ヒエロニムス・ボッシュ。
そう、シュルレアリズムで有名なあの画家と同じ名前です。
こちらは有名なシリーズということで、翻訳も全て出ています。
面白かったら続きも読んでみましょう。
気難しい一匹狼のボッシュがたまたま扱った事件。
それはヴェトナム時代の戦友が配水管の中で死体となって見つかった、というもの。
単なる薬中の事故かと誰もが思いきや、ボッシュの観察力によって殺人事件の可能性が高いものとなります。
FBI捜査官エレノアとコンビを組むことになり、やがて突き止めた真相は…。
文庫本上下2巻とあって、読みでは十分。
快調なテンポでありながら人物設定もしっかりしていて、軽い印象を残しません。
死体が見つかる暗闇の配管と、ヴェトナム戦争時の記憶「ブラック・エコー」(原題)が重なるように、ボッシュの過去も少しずつ語られていきます。
まだまだ彼には謎があるようなので、シリーズを追うごとに明らかになるのでしょう。
読者の興味を引っ張りますね。
こちらもやや話をこさえた感はありますが、複雑なプロットを丁寧に描きながら終盤に大きな映画的山場を用意していて、これが新人の小説かと驚かされます。
娯楽サーヴィスがありながら、乾いた語り口と余韻の残るラストはハードボイルド・ミステリそのもの。
映画化したら面白いのではないかと思いつつ、2時間なり2時間半なりになったら失われるものも多いことでしょう。
この世界は小説のままにしておくのが懸命かも知れません。
面白かったので第2作以降も興味惹かれました。
お楽しみはこれから、ですね。
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