days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Species Design by H.R.Giger


先日観たスピーシーズ種の起源』で、長年じっくり観たかった(読みたかった)画集を買ってしまいました。
出版元のトレヴィルは既に無く(現在の社名はエディシオン・トレヴィル)、古本となります。
800円くらいだったので、かなりお得に入手出来ました。


内容はH.R.ギーガーのアートワークを中心に紹介した『スピーシーズ』メイキング本といったもの。
多くのラフスケッチ、エアブラシ、造形物の写真、撮影風景の写真などが収められています。

同じくトレヴィルから出ていた『エイリアン』のアートワークを収めた『ギーガーズ・エイリアン』と似たような構成になっています。
ギーガー自身の文章も多く、『エイリアン』同様に真摯に打ち込み、ハリウッドの制約に悩む様子も生々しく語られています。
監督ロジャー・ドナルドソン、視覚効果監修のリチャード・エドランド、クリーチャー効果とメイクアップ効果のスティーヴ・ジョンソンらのギーガーへの賛辞も納められていますが、ギーガーとの温度差も感じますね。
結果的にギーガーはジョンソンの仕事振りと、クリーチャーSILを演じたナターシャ・ヘンストリッジには満足したようですが、それ以外は不満足だったようなので。
ハリウッドで苦闘する芸術家の姿の記録としても、短いながらも資料価値があると思います。


映画のスタッフに最初にエアブラシのデザイン画を渡すと、自分が意図したものと違う物へと変えられてしまう、という過去の経験から、ギーガーがラフスケッチを中心に作業を進めていたので、画集という点では『ギーガーズ・エイリアン』に比べて満足度はかなり低いです。
しかしそのデザインの考え方は文章やスケッチから読み取れますし、またジョンソンらが製作したクリーチャーの写真も多くあるので、映画では分からなかった細部が見られるのは楽しい。

SILが見る列車の悪夢場面は脚本にあったものではなく、ギーガーがかねてから持っていたアイディアだったというのも面白かった。
列車の場面はギーガーの構想ではもっと壮大だったようで、そちらを見たかったのですが、予算の都合でかなり短いものになってしまったのは残念です。
もっとも構想通りだったら映画のバランスを崩してしまった可能性もありますが。


非常に興味深かったのは、脚本家デニス・フェルドマンの当初の構想であるシノプシスが収録されているところ。
映画版とは全く違い、随分と小ぢんまりとしたプロットなのです。
もっと低予算の映画を目指していたのでしょうね。
マイケル・マドセンが演じた殺し屋役は刑事だし、マーグ・ヘルゲンバーガーも科学者も出番が多そう。
この2人とSILが主人公として共通なだけで、後はかなり違う筋立てとなっていました。


安価な古本ならばまだ入手も容易のようですし、この映画がお好きな方ならば手元に置いて良いアートワーク集だと思います。

スピーシーズ・デザイン

スピーシーズ・デザイン