days of cinema, music and food

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Arkham Asylum: A Serious House on Serious Earth


有名な作品であっても、アメコミ翻訳本はあっという間に絶版になるので、入手困難という場合が少なくありません。
ダークナイト・リターンズ』、『ウォッチメン』、『キングダム・カム』等々。
幸いにもこれらは昨年から今年に掛けて、資料等が追加された「完全版」という形で復刊されました。
グラント・モリソン作、デイヴ・マッキーン画の『バットマンアーカムアサイラム』もそれらに追加すべき1冊でしょう。
この度、やはり「完全版」として復刊されました。


物語はゴッサム・シティの凶悪な精神異常犯罪者を幽閉しているアーカム精神病院で暴動が発生し、主犯であるジョーカーの挑戦を受けて立つべくバットマンが乗り込みます。
しかしバットマンは、アーカムアサイラムの呪われた過去の成り立ち、ジョーカーの狂気、両親を目の前で殺された己のトラウマなどで、精神の均衡を崩して行く…という、かなりホラーテイストな異色作です。


この本が凄いのは、ひとえにデイヴ・マッキーンの画にあります。
狂気とはかようなものか、という迫力ある画の数々。
元絵での絵の具の盛り上げ(が分かるのです)、レース生地など物の塗り込み、写真の使用などなど、ありとあらゆる手段でバットマンの心の闇、ジョーカーの狂気を描き尽くそうとします。
これこそ狂気に見えてしまう迫力。
これぞ現代アート
前代未聞のコミックです。


物語にはカタルシスは無く、バットマンも活躍する場面さえありません。
しかし沈痛な心を抱えながらも、読み終えると暗闇に一筋の光明がうっすらと見えます。
異色のコミックで一般的な内容ではないかも知れませんが、一読をお勧めしたい作品です。