days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Kick Ass


映画『キック・アス』劇場公開に合わせて、マーク・ミラー作、ジョン・ロミータ・Jrの原作コミックも無事に翻訳されました。
UK版Blu-ray Discにて鑑賞済みの映画版にぞっこん惚れ込んだ私としては、逃す訳にはいきません。


物語前半は映画とかなり近いのですが、原作の後半は原作とは大いに異なります。
よって映画と原作コミック、どちらを先に見て読んでも、どちらも楽しめることでしょう。
但し、血しぶき飛び散る描写が苦手でなければ、という注釈はどちらにも当てはまりますが。


原作を読んでまず驚くのは、『殺し屋1』もかくやという凄惨な肉体破壊描写の数々です。
アメコミでここまで超簿応力的な直接描写が頻繁にあるのは、初めてでしたね。
しかしこれも必要な描写です。
何故なら主人公らは特殊能力を持たない、一般人だから。
現実の暴力に巻き込まれるのだから、それらがもたらす結果もまた、凄惨なものなのです。


次に驚くのは、映画とは大きく逸脱した後半の展開と結末です。
いえ、似通った場面、同じ場面もあるにはあるのですが、結果としてそれぞれ全く違うテーマを持つ作品になったと思います。
ヒーローを夢見たアンチヒーローが、結果的にヒーローになるのが映画版。
ヒーローを夢見たアンチヒーローが、結果的にアンチヒーローのままなのが原作版。
この差は大きい。
どちらが快か不快かと言えば、間違い無く映画版が快ですが、リアリズムという点では後者。
しかし映画版は単なる夢物語で終わるのではなく、恋愛も含めて現実世界での若者の成長を描いています。
よってこの違いは、作者の視点の違いとしか言いようがありません。
原作執筆中に映画の製作が同時進行していたそうなので、映画版の後半は監督&脚本家マシュー・ヴォーンの持ち味と考えた方が良さそうです。


私自身は先に見ていた映画版は傑作だと信じている者ではありますが、この原作版の味も捨てがたい。
読む者にヒーローとは?という問いかけもしてくる意味でも、これは興味深い娯楽アクション・コミックでもあるのです。
万人向けではありませんが、映画版と共にお勧めの本です。


キック・アス (ShoPro Books)

キック・アス (ShoPro Books)


この原作が日本で売れて、同じくマーク・ミラー作の『ウォンテッド』原作コミックも邦訳してもらえないでしょうか。

Wanted

Wanted