days of cinema, music and food

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Daredevil: Born Again


スタン・リーらが創作したアメコミ・ヒーローのデアデビルと私との接点と言えば、ベン・アフレックが主演した映画版くらいしかありませんでした。
今回、『デアデビル:ボーン・アゲイン』が翻訳本が出版されるというので読んでみました。


フランク・ミラー作、デヴィッド・マツケリー画のコンビと言えば、以前ご紹介したバットマン イヤー・ワン/イヤー・ツー』がありました。
同書に収録された『イヤー・ワン』は傑作でしたが、今回も期待していました。


本書の悪役は映画版でマイケル・クラーク・ダンカンが演じていたキングピン。
盲目の弁護士にして夜は特殊能力レーダーセンスを駆使して街の悪党退治をしていたマット・マードックの正体を知った彼が、徹底的にマードックを破滅に追い込みます。
職も家も友人も無くした彼は精神的にも追い詰められますが、すんでの所で息を吹き返し、キングピンに逆襲して行く、というのがプロット。
ミラーらしくこれぞハードボイルドな世界が繰り広げられます。


兎に角リアリスティックな描写や展開で、アメコミ・ヒーローものとは思えません。
執拗なまでに描かれたマードックの精神状態など、上質な文学を読んでいるかのよう。
アメコミでも心理描写がここまで出来るという域にまで達しています。
だから終幕にキャプテン・アメリカらスーパーヒーローが登場すると違和感があり、少々残念に思いました。
もっとも、実は本書は独立した物語ではなく、連綿と続く『デアデビル』物語の一部にしか過ぎません。
1986年に連載されたものの抜粋なのです。
ですからキングピンとの対決も決着は付かず、いささか肩透かしを食らったのでした。
それでもミラーならではの独特な語り口、マツケリーの絵は素晴らしい。
このコンビで独立した長編を読んでみたい。
そう思わせる出来栄えだったのでした。


デアデビル:ボーン・アゲイン

デアデビル:ボーン・アゲイン