Book of the Dead
沖縄旅行中は、こんな本を読んでいました。
ジョン・スキップ&クレイグ・スペクター編によりホラー・アンソロジー、『死霊たちの宴』上下巻です。
収録されている作家はスティーヴン・キング、リチャード・レイモン、ラムジー・キャンベル、ロバート・R・マキャモン、ジョー・R・ランズデール、ダグラス・E・ウィンターと、錚々たる顔触れ。
加えて、余り名の知らない作家たちも参加しています。
ホラー・アンソロジーは漫然と恐怖をテーマにしたものでも面白いものがありますが、本書のテーマはずばり「ゾンビ」。
生き返った死者が生者の肉を食らうという、ジョージ・A・ロメロ原案のものに沿っている作品が多かったです。
ロメロも序文を寄せています。
それでも作家によって、色々と変化球を見せてくれて面白い。
知能を持ったゾンビという設定も珍しくなく、中には社会を築いている設定のものさえあります。
刹那的殺伐とした日常を生きるゾンビを描いた小編まであり、まさかブレット・イーストン・エリスのパロディまで読めるとは、全く思いもしませんでした。
まぁしかし、以前は色々なホラー小説を読んだものですが、久々にNasty Horror(胸糞悪いホラー小説)を読んだという実感でした。
明らかに映像不可能、明らかに倫理の垣根を越えてしまった小説も散見され、ある意味強烈な印象を残す。
いや、こりゃヒドいよ、ホント。
これが上巻を読んでの感想でした。
しかしホラー小説に限らず、そもそも文学とは読み手の道徳や価値観を刺激もしくは破壊する場合があり、その意味では挑戦し甲斐のある短編集とも言えます。
キングの作品は、生ける死者だらけになってしまった世界で妊婦となった女性の物語。
優柔不断だった彼女が、自立していく様がメインに描かれている。
でもまぁ、キングはやはり短編より長編の人だよね。
そんな実感があります。
過激な作品が多い中でマトモな内容でした。
特にエドワード・ブライアント作の『地獄のレストランにて悲しき最後の逢瀬』にはびっくりしました。
小説を読んでショッキングな思いをしたのは『犬の力』以来です。
これもまた、読書ならではの経験ですね。
下巻はやや長めの、力の入った中篇が目立ちます。
アメリカ南部ミステリで有名になったジョー・R・ランズデールのハードボイルドSFゾンビ編『キャデラック砂漠の奥地にて、死者たちと戯るの記』と、超お下劣グログロで笑っちゃうデイヴィッド・J・ショウによる『聖ジュリー教団VSウォームボーイ』、トリを飾るロバート・マキャモンのショートショートと言っても良い『わたしを食べて』が印象に残りました。
特にマキャモンのは死して尚ロマンスを求めるゾンビ達を描いた傑作です。
上巻と併せての感想は、ジョージ・ロメロが作った「人肉食いの知能殆どゼロ」なゾンビ像に捉われない、知能を持ち合わせたゾンビ像も多く、ユニークなものが多かった。
全体的にはそれなりに楽しめるアンソロジーでしたが、同時にもっと傑作も読みたいとも思い、少々の物足りなさも感じたのも確か。
でも中々、傑作ばかりが集まる、というのは無いのですけれどもね。
真夏のホラー小説集も中々楽しいものでした。
- 作者: スティーヴンキング,リチャードレイモン,ラムジーキャンベル,フィリップナットマン,チャンマコンネル,C.スペクター,J.スキップ,Craig Spector,John Skipp,夏来健次
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1998/08
- メディア: 文庫
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- 作者: ロバート・R.マキャモン,スティーヴン・R.ボイエット,ブライアンホッジ,ジョー・R.ランズデール,ダグラス・E.ウィンター,J.スキップ,C.スペクター,John Skipp,Craig Spector,夏来健次
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1998/08
- メディア: 文庫
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