days of cinema, music and food

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The Walking Dead


先日に引き続き、何だかゾンビ本づいていますが(^^;
昨年製作されたTVシリーズにハマって以来、首をず〜〜〜っと長くして待っていた、ロバート・カークマン原作、トニー・ムーア、チャーリー・アドラート画の文字通り待望の原作コミック『ウォーキング・デッド』を読了しました。


いやぁ、これは続きが気になります。
売れたら続刊されるそうですが、発売当初はアマゾンでは品切れになっていました。
是非、続きを出してもらいたいもの。
このクリフハンガーなエンディング、気になります。


原書の3巻までを日本版は1冊にまとめての出版で、かなり分厚い。
でも300ページを一気呵成に読ませてしまうのです。
生者の生肉を食らうゾンビによって世界はあっという間に崩壊し、主人公である保安官リックと妻子、知り合った人々が旅をして行く…というのが本書の内容。
ゾンビ襲撃のホラー場面もありますが、世界が崩壊し、死と隣り合わせが当たり前の日常で、人がどのように変化していくのかを冷徹に描いた重厚なドラマが主眼となっています。
会話部分にユーモアはあるものの、基本的にシリアスで、何より人心の荒廃が怖い。
時には狂っているのでは、と思わされる人物も登場する。
しかし狂っている世界で狂うのは、ある意味正気ではないのか。
善なる象徴と思えた主人公リックでさえ、荒廃に飲み込まれそうなのだから。
同じ境遇に置かれたら、ひょっとしたら自分もそうなるのでは…と思わせるだけに、絶望感も深い。
これぞホラー。
これぞジョージ・A・ロメロのシリアスな後継。
文字通りゾンビものの決定打、そして終末SFの決定打と言っても良いでしょう。


アメコミというと派手なカラーを思い出しますが、本書はモノクロ。
著者によると古い怪奇映画の影響のようです。
当初はタイトルも、ロメロの古典的モノクロ作品『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』からそのまま拝借するつもりだった、と言うから面白いもの。
カラーだとグロテスクな血しぶきが目立ち、テーマであるドラマ性が薄れたかも知れません。
結果的に、モノクロによる画が人物の心の陰を表しているようで効果的でした。


今のところ傑作です。
リック達は人間性を失わず、文字通りゾンビにならずに生きていけるのでしょうか。
その行く末を見届けたい。
画は原書第1巻がトニー・ムーアですが、第2・3巻がチャーリー・アドラートに交代しています。
日本の感覚からすると面食らいますが、現在第12巻まで出ている原書はさらに交代があったとか。
アーティストの交代がどう影響を与えているのか、そちらの面でも注目しましょう。


日本版で忘れてはならないのは、スティーヴン・キング研究や翻訳でお馴染みの、風間賢二氏の訳です。
正直に言って、氏の起用を氏のTwitterで知ったときは、「何で?コミックだから台詞しか訳さないのだから、起用は勿体無いのでは?」等と疑問を抱きました。
しかし実際に読んでみて、この起用は大成功ですね。
歯切れ良くリアルな、且つ文学的な訳にもなっていて、読んでいてざらつくような台詞が多い。
素晴らしい。


こうして原作を読んでみて、TV版が原作からかなり変えているのも面白かったです。
主要人物の生死さえ違うのですから。
第2シーズンは全米で放送開始されていますが、こちらは予算削減でクリエイターのフランク・ダラボンが降板したのが痛いのでは…。
ちょっと心配していましたが、だいこくさんの記事を読む限りでは、中々好調な出だしのようです。


日本ではいつから観られるのか…と思いきや、あれ、もう来月からですか。
こりゃ録画準備をしておかないと!


視聴率もシーズン1以上に高かったとの事ですから、相当に注目されていたのでしょうね。
来月からは日本でもケーブルTVでも観られるのだから、その影響で是非、日本版も売れて続刊も出してもらいたいです。
アメコミ好きの方、ホラー好きの方、ゾンビ好きの方は、是非本書を手に取ってもらいたいものです。
お薦めの本です。


す一さんのレヴューも的確です。
こちらもお読み下さい。


川本ケン氏のレヴューもどうぞ。


ウォーキング・デッド

ウォーキング・デッド