映画は待ってくれる
丁度1年前に紹介した芝山幹郎の映画批評集『映画は遊んでくれる』と同じく、かつて『キネマ旬報』に連載されていたものを1冊にまとめたもの。
時代は『〜遊んでくれる』の前のものばかりで、1990年代前半のものが多いです。
著者は『週刊文春』の映画星取表でもお馴染みの、評論家、翻訳家。
独特の文体と内容が特徴です。
当時から面白て好きでしたが、こうしてまとまっているのは有難い。
含蓄のある、しかしちょっと気取った所もある文章は好悪ありましょうが、私は好きですね。
何より読み物として面白くスリリングなのです。
その映画を掘り下げるのは勿論の事、連想する映画にまで筆は進み、芝山の脳内映画旅行に付き合うのは非常に楽しい。
映画と戯れています。
『許されざる者』や『パルプ・フィクション』、『カジノ』や『ビッグ・リボウスキ』といった著者の(そして私も好き)好きな映画に関する文章の場合、著者のフットワークは着実で堅実で、しかし軽い。
鋭い指摘、思いがけない視点で頷きながら、面白がってしまいました。
読み物としてお勧めの本です。
- 作者: 芝山幹郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1998/04
- メディア: 単行本
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以前、ご紹介したこちらもお勧めです。
- 作者: 芝山幹郎
- 出版社/メーカー: 清流出版
- 発売日: 2009/12
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ところで近年、読み応えがあって説得力のある長文の映画批評を書ける人が、他に余り居ないのは、映画界周辺の問題な気がしますね。
自己耽溺な文章を書く人こそあれど、好悪もしくは欠点を具体的箇所で説得力のある論旨で指摘する人が、私の寡聞かも知れませんが少ないと思います。
もっとも、そういう長文を載せる媒体自体が、余り無いという問題もありそうです。
キネ旬も最近は書店ですっかり見なくなってしまいましたしね…。