days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Woman


自宅にあったので何気なく読み始めたら止まらなくなった小説です。
ボストン・テランの『音もなく少女は』を読了しました。
世間ではミステリとして紹介されているようですが、確かにそのような要素はあるものの、ここは濃密な心理描写に浸りたいものです。


1975年のニューヨークで始まる序章に始まり、そして物語は1950年代へ。
家庭内病力を容赦なく振るうチンピラの父と、離婚を許さないカトリック信者ゆえ、夫への恐怖ゆえに耐える若い母。
その2人の間の、生まれつき聾者である娘。
やがて母子の前に現れたのが、第二次世界大戦時に恋人がユダヤ人だったので苦難を経験した、手話の出来る女。
物語は女たちを中心に回り出します。


原題は『Woman』。
邦題、原題、それぞれどちらも良いです。
これは理不尽で狂った世界で必死に生きる女たちの物語。
男たちは唾棄すべき者も尊敬に値する者も、この世界では脇役でしかありません。
女達の「生きよう」との決意と結束が描かれた濃密で緻密な心理描写が、読み手に窒息させるような緊張を持って描かれています。
ですが読者に窒息を強要はしません。
短く区切られた各節によって全体的に非常に読みやすく、続きが気になってしまいます。


読んで良かったと思える緊迫の傑作ドラマ。
お勧めです。


音もなく少女は (文春文庫)

音もなく少女は (文春文庫)