days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

God is a Bullet


先日読んで感銘を受けた『音もなく少女は』のボストン・テランの処女作『神は銃弾』を読んでみました。
これも自宅にあったもの。
数年前にかなり話題になった本で、妻が買って読んでいましたが、感想を聞くと「気持ち悪い」と言っていました。
その事を訊くと、覚えていない模様。
活字中毒の彼女ですから、次々と読んで忘れていっているようです(^^;


内容は迫真のハードボイルド調スリラー、ノワール小説でした。
狂気のカルト教団に元妻を惨殺され、娘を誘拐された保安官事務所内勤のボブ。
元教団信者で元ジャンキーの若い女性ケイスと共に、教団を追うという単純なプロット。ですが面白い。
カルト教団の殺人やレイプ、覚醒剤使用等の内容に拒否反応を示す方にはお勧め出来ません。
かなりどぎつい内容です。
それでもメインがボブとケイスの心の旅なので、露悪的な内容を扇情的に売っている小説ではありません。
信仰に厚いボブが、自分の娘を取り戻すという目的の為に、汚い事にも手を染めて行く様。
カルト教団の洗脳を解かれた故、信仰を持たず、ささくれだった心を持つケイスの変化。
人物の心に沈殿した闇を切り裂く文体で突き進む、これは憤怒のパルプ・ノワールです。


傑作だった『音もなく少女は』に比べ、こちらは構成のバランスとかどうなのだろうと思うところもあります。
正直に言って荒削り。
過剰な部分と物足りない部分のアンバランスさも気になります。
それでも圧倒的迫力とスピードで一気呵成に読ませてくれました。
ヒロイン、ケイスの造形も素晴らしい。
死地から帰還した者だけが持ちうるであろう強さと脆さを同居させ、常に内面で葛藤している印象的な人物でした。
彼女の発展系が『音もなく少女は』のヒロインの1人に見られるのも興味深い。
田口俊樹の訳も見事。
文学的娯楽犯罪小説と言っても良いでしょう。
力作。
いや、傑作と言っても良いかも知れません。
お薦めです。


神は銃弾 (文春文庫)

神は銃弾 (文春文庫)