days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

別冊映画秘宝 衝撃の世界映画事件史


ロジャー・コーマンから個性的な映画人紹介、事件までを多数記載して面白いムック本です。
全体は2部構成になっていて、第1部が「映画業界の因習に歯向かうロジャー・コーマンと世界の独立独歩映画監督」。
第2部が「地獄の世界映画事件史」と銘打っています。
どちらも面白いのは面白いのですが、全体的にややとっちらかっており、まとまりに欠ける本でもあります。


個人的には深夜の映画紹介番組出演や『ロードショー』に連載持っていた光山昌男の記事です。
これ目当てで買ったと言っても過言でありません。
光山は、例えばブライアン・デ・パルマジョージ・A・ロメロと友達で、『殺しのドレス』の犯人の視点から見た版や、『ゾンビ』のディレクターズ・カットを見た、と吹聴していたとされる怪人です。
エイリアン2』長尺版もありましたな。
後からだとおかしな話も多いのですが、当時はネットも無かったので、ガセかどうか分からなかったのでしょう。
私もすっかりダマされたのですが、映画ごとにヴァージョン違いがあるんだ、と教えてもらったのは、実はこの人なのですね。
本書での記載は数ページだけですが、まぁ良いでしょう。
光山に近い人が書いただけに、中々に生々しい証言ではあります。


邦画界とヤクザとの関係も、例えば美空ひばりや鶴川浩二、菅原文太等、関連ある人の実名を挙げて記載し、「あぁやはり関係は深かったのかぁ」と思わせました。
警察の介入によりシリーズ化が断念されたヤクザ映画の話など、面白い話も多かったです。
国家権力の介入を招いた映画界の脇の甘さは、非常に気になるところではありますが、その視点での考察には欠けてしました。
かように、面白いのは「世界映画」ではなく「日本映画」の記事が多かったです。


最後のトリを飾るのは独立系プロデューサー、山本又一郎へのインタビュー。
アメリカン・バイオレンス』、『ベルサイユのばら』、『ミシマ』のプロデューサーですね。
これは読み応えがありました。
1970年代映画界の証言として、『ミシマ』舞台裏から今後のあるべき日本映画界の姿も示して力強い。
この記事が無かったら、文字通り単なるごった煮本になっていたでしょう。


映画界ネタ本として面白いので、映画ファンは読んで損はしないと思います。


別冊映画秘宝 衝撃の世界映画事件史 (洋泉社MOOK)

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