Superman: Red Son
マーク・ミラー作、デイヴ・ジョンソン&キリアン・プランケット画の『スーパーマン:レッド・サン』を読了しました。
もし「あの人」が、北米の勤勉で善良な農家ケント家ではなく、ウクライナの共同農場(コルホーズ)に落下していたら…という、いわゆる「if」ものコミックです。
スーパーマンはクラーク・ケントと名乗る事はなく、共産主義を信奉し、人民の平等に心を配ります。
スターリンに忠実で、米ロ冷戦のソ連側最終兵器、切り札としての存在でもあるのです。
登場するヒーローは彼だけではありません。
ワンダーウーマンは全体主義に染まりつつあるスーパーマンを心配するし、バットマンはスーパーマン体制を崩すべく暗躍する闇のテロリスト。
グリーンランタンことハル・ジョーダンは、アメリカ側が送り込む対抗馬です。
無論、「いつもの」世界では悪の天才としてスーパーマンの強敵として立ちはだかったレックス・ルーサーだって出て来ます。
スーパーマンの存在を脅威に思ったアメリカが、その頭脳に期待しての起用なのですから。
これがブラックユーモア的設定なのは、作者のミラーも重々承知でしょう。
しかし作品自体は至極真っ当な、シリアスなアメコミヒーローものとなっています。
それでいながら紋切型の展開を拒否し、一方でヒロイズムを謳い、有名ヒーローを多数登場させ、しかも思いもしなかった見事な着地を迎えます。
これは傑作です。
マーク・ミラーは映画化された『ウォンテッド』『キック・アス』の原作者でもあります。
後者は邦訳されて映画版よりもさらに強烈で救いの無い、アンチヒーローものの傑作でした。
問題は前者です。
映画版とはまるで違うパラレルワールドものでもあるらしい『ウォンテッド』を、どこか邦訳出して欲しいと熱望!
- 作者: マーク・ミラー,デイブ・ジョンソン,キリアン・プランケット,高木亮
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