days of cinema, music and food

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エルモア・レナード、87歳で死去


2009年に『3時10分、決断のとき』が日本公開されたとき、「あれ、まだエルモア・レナードって生きているよね。しかも相当高齢の筈」と思ったものでした。
しかも近年まで執筆活動をしていた筈ですから。
もっとも、邦訳は余り無かったようですが。


一時期は浴びるように、中毒のように読んだ作家でした。
基本的にイイ男(大体、頭が切れて度胸満点、腕も口も立つ小悪党)を主人公に、イイ女(セクシーで頭が切れて口が立つ度胸満点)とバラエティ豊かな小悪党ども(口が立つ卑劣漢あり、笑える奴あり、鈍重なのあり…)が織りなす、二転三転四転の先が読めない犯罪小説が殆どです。
スティーヴン・キングがレナード作品を1冊読んで、「これは何だ」となって書店で他の本も買い漁ったと書いていましたが、まさしく私も同様でした。
近所のブックオフを虱潰しに探し回ったのです。
つまり邦訳は出ても売れていなかったので、私が「発見した」時には、既に普通の書店では売っていなかったのですね。
どれも楽しめ、でもどれもが満足とはいかなかったのですが。
殆どの作品が全体に軽く、終幕もあっさりしているのです。
呆気無くカタが付くというか。
一瞬で対決が終わるというか。
でも読んでいる間は最高に面白かったです。


個人的ベストは『ラブラバ』。
誰か映画化してくれないかなぁ。
度胸と知恵の駆け引きで面白かった。


たくさん映画化されているレナード作品ですが、そんなにはたくさん観ていないけれども、1番良かったのは何と言っても『アウト・オブ・サイト』です。
原作の持つ軽妙洒脱さとテンポの良さが、最高の形で生かされていました。
映画版『アウト〜』と作品世界が繋がっているタランティーノの『ジャッキー・ブラウン』は、原作に比べて軽快さが決定的に欠けています。
好きな映画なのは違いありませんが、あれはやはりタランティーノ映画でした。
レナード作品としては減点せざるを得ません。


タランティーノ映画のレナード作品からの影響はよく言われますし、またタラ本人も認めていますが、とにかくレナード作品における各小悪党どもの会話がおかしかった。
無駄口駄口減らず口で、会話が本筋には関係ない場合が珍しくありません。
悪党は無口だというセオリーをひっくり返しました。
翻訳も良かったけど、あの発明は凄いと思います。


レナード原作/映画では『ゲット・ショーティ』もありました。
あれも原作の方がずっと面白かった。
映画狂の借金取り立て屋が、魑魅魍魎が跋扈するハリウッドという危険な世界で、映画製作にはまっていき…という、面白い話です。
原作はレナードの傑作の1つと思っているのに、バリー・ソネンフェルド演出はオフビートな作風なので、やはり小説に比べてテンポがかったるいのです。
いや、悪くないけど、あれもレナード小説のテンポとは違います。
それでもジョン・トラヴォルタ演ずる主人公チリ・パーマーは、ドンピシャで素晴らしかった!
腕っぷしも強いけど、それは殆ど見せず、知恵と度胸で危機を潜り抜ける男。


レナードには本当に楽しませてもらいました。
ありがとう。
合掌。