The Walking Dead 4
ロバート・カークマン作、チャーリー・アドラート画、風間賢二訳の大河コミック『ウォーキング・デッド』第4巻を読了しました。
あれ、第3巻を読んだのは、もう1年近く前だったのですね。
度々ご紹介しているように、ゾンビに世界が席巻された週末世界を舞台に、元保安官リックとその幼い息子ら、生き残った人々のサバイバルを描くホラー・ドラマです。
物語序盤の第1巻では、人食いゾンビ達が恐怖の源となっていました。
ゾンビが既に日常となっている本書では、一見するとホラーな展開はいささか影を潜めてしまったかのようにも思えます。
しかし主人公リックらは、既に我々の社会通念から大きく逸脱した精神構造となっていて、もはやそれ自体がホラーなのです。
元々の彼らは善なる人々だったのに、家族や身内を守る為ならば、如何なる非道な事でも躊躇なく行う存在となってしまったのでした。
無意識に生者に襲いかかり、人肉を食らうゾンビの存在はもはや背景でしかありません。
意識的に自らの生を邪魔しようとする生者を、容赦なく屠るリックらの心理が、ぐぐと前面に出て来ています。
本巻ではリックらを付け狙う、食糧不足の世界で生き残るために意識的に人肉を食らう、武装した小集団が登場します。
彼らは一見すると普通の人達です。
しかし彼らの言っている事は明らかに狂っています。
それでも、道徳概念が今の社会とは大きく変容した世界において、果たして彼らは狂っているのでしょうか。
既に一線を越えてしまったリックらと、何が違うのでしょうか。
これはもう、感情移入とかではなく、登場人物の思考や行動を息を潜めながら読み進めるしかありません。
既に怪物になってしまったのではないか、と既に自らを信じていない彼らの心理は、非常に読み応えがあるものとなっています。
本巻後半には、防護壁に囲まれて人々が平和に秩序だって暮らす、一見理想的と思えるコミューンが登場します。
そこに招かれたリックらが、ここは本当に理想郷なのかと疑心暗鬼に陥る様が、緊張感を持って描かれます。
殺伐とした世界で多過ぎる犠牲を払い、長らく生き残って来たリックにとって、平和そのものが疑問なのです。
リックらの何と哀れな事でしょうか。
そしてこのコミューンの正体は?
本当に理想郷なのでしょうか?
それとも…?
ゾンビと惨たらしい戦いを繰り広げる展開を期待する向きには、本書は既に期待外れの烙印を押されかねないものとなっています。
しかし本書は、究極のサバイバル状況となってゾンビ世界で、如何に人は生きて行くのか、またはサバイバルに於いて人の精神とはどのように変化していくのか、という実験をしているのではないか。
私にはそう思えてしまいます。
ロバート・カークマンの実験は本国でもまだまだ続いているようです。
これは先が気になります。
続きは邦訳第5巻を待たねばなりませんが、出るかどうかはこの第4巻の売れ行き次第だとか。
となると売れてくれ、と祈るしかありません。
これは是非とも続きが読みたいものです。
過酷なサバイバル状況を描いた本書が、日本でも売れるように願っています。
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もちろん、第1巻から第3巻もお勧めです。
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