days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Return to "Persepolis"


数年前に読んで感銘を受けたマルジャン・サトラピの傑作バンド・デシネ(BD:仏語圏のコミック)『ペルセポリス』。
どなたかに貸しっぱなしにしていたら誰に貸していたのか分からなくなって、行方不明になってしまいました。
そこで再度の購入です。
1冊1,500円弱ですから安い買物ではありませんが、致し方ありません。


イランの少女マルジの6歳から14歳までを描く第1巻は、1970年代から1980年代にかけての、イスラーム圏の人々の日常の菅らし振りが活き活きと描かれています。
モノクロで単純、親しみやすい絵柄は可愛らしさもあり、魅力的。
しかし一方で、戦争や処刑などが隣り合わせの厳しい日常も描かれているのです。
戦争で父を失ったクラスメイトの女の子の、「死んで英雄になるより、生きて刑務所にいてほしかったな」という台詞も忘れがたいものでした。


きな臭い国内事情とマルジの性格を考えた両親によって、10代半ばにしてフランス留学に行かされる事になったマルジを描く第2巻。
前巻の最後で、それまで自由に育てられた14歳のマルジは、言論や思想の統制が厳しくなったイランから、両親の意向によりウィーンへと留学する事になりました。
それ以降の青春と挫折、再起の日々を描きます。


前巻では、私はそれまで知らなかったイスラーム世界について、マルジの目を通して知る事になりました。
まるで目を見開かされたかのようでした。
しかし今度は、マルジの目を通して、マルジが受ける西欧世界でのカルチャーショックを体験する事になります。
友人が出来ても愛を求める孤独な日々、挫折、帰国。
堕落の日々からの再起。
マルジを救ったのは知的で理解力のある両親、祖母。
そして彼女自身の知への思い、反権力の思いでした。
そして若く苦い結婚。


サトラピの可愛らしいシンプルな絵柄で描かれるのは、厳しい現実です。
と同時に、私の胸にも突き刺さるものがありました。
マルジの厳しい状況に比べて、自分は知についてどれだけ真剣に考えているのだろうか、と。


ベン・アフレックの秀作『アルゴ』で描かれていた、アメリカ大使館事件もさらり出て来ていました。
読み返すたびに新たな発見がある傑作です。
お勧め。


ペルセポリスI イランの少女マルジ

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ペルセポリスII マルジ、故郷に帰る

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