days of cinema, music and food

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Don't Breathe


話題のホラー『ドント・ブリーズ』18時半からの回を鑑賞。場内は満席、しかも半分くらいが10代後半から20代の女性という客層だ。女子高生中心だった『パラノーマル・アクティビティ』のときを思い出すね。もっとも客層が客層だったからか、皆さんし〜んと真面目にお行儀よく鑑賞していたが。


荒廃の都市デトロイト。貧困から抜け出すべく窃盗を繰り返す、ロキシージェーン・レヴィ)ら若者3人組がいた。彼らが次に目を付けたのは退役軍人である盲目の老人(スティーヴン・ラング)の家だ。たやすい仕事だろうと深夜に老人の家に忍び込むが、逆に3人は恐怖のどん底に陥れられる。


倒すのは簡単な相手と思いきやヤブヘビだった…というのは、リーアム・ニーソン主演の『96時間』を代表とする近年のアクション・スリラーのパターンの1つだが、それをホラー/スリラーでやったらどうなるか。しかもやられる側からの視点で。その回答の1つがこれだろう。舞台の殆どが一軒家で登場人物もかなり絞られており、しかも上映時間88分というコンパクトさでありながら、内容は濃い。前作『死霊のはらわた』ではあまり関心しなかったフェデ・アルバレス監督は、これが本領発揮なのだろう。手を変え品を変えて危機また危機を用意し、意表を突く展開を連打し、徹底的に観客をスリルと恐怖に落とし込もうとする、アルバレスと共同脚本家ロド・サヤゲスの意地には拍手を送りたくなる。ユーモアの欠如が気になった前作に比べ、こちらは徹頭徹尾シリアスであろうという姿勢が題材と合致していたのも良かった。冒頭から金持ちの家に侵入してやりたい放題の若者たちの姿に嫌悪を抱かせ、それからロキシーと、父が警備員というアレックス(ディラン・ミネット)の境遇をさらり描いて、同情を抱かせる。一方の老人にも不幸な過去があり…と、人物描写ですらアップダウン激しい。老人の正体は言わぬが花だが、まぁよくもこんなのを考えたものだ。徹底的に観客を翻弄しようとするその偽悪的姿勢はまことあっぱれ。しかしやはりと言うか、ユーモアの欠如は単調さと紙一重にもなりうる。ホラー慣れしている私にとって若干の物足りなさは、そこら辺にもありそうだ。


1番疑問だったのは、盲人とは言え、あれだけ近くに居たら存在がバレているだろう…という緊張感が希薄な事。結構、物音とか立てているしね。驚かし主体だったのが残念だった。


死霊のはらわた』でも熱演していたジェーン・デヴィは、こちらも熱演。幼い妹想いで度胸も据わり、機転も効くヒロインを印象的に演じていた。そしてスティーヴン・ラング。『アバター』での悪役クオリッチ大佐も中々強烈だったが、こちらもに迫力満点。ホラー映画史に残りそうな怪演だ。


ホラー映画は単調な展開と単調な演出では、まるでつまらない。逆に言えば、良いホラー映画とは緩急自在でなければ観客を怖がらせる(面白がさせる)ことはできない。その点では『ドント・ブリーズ』は大いに楽しませ、ハラハラさせてくれる映画だ。