days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

私的映画ベスト(4)


(承前)


ヒストリー・オブ・バイオレンス(2005)
デヴィッド・クローネンバーグは大好きな異形エログロSFホラー映画監督だったが、近年はすっかりその手の映画を監督しなくなってしまった。しかしこの映画は素晴らしい。田舎町のダイナー強盗2人組がそこの主人ヴィゴ・モーテンセンによって撃退されて全国ニュースになる。それからモーテンセンの周囲にはお前の過去を知っているぞ、というマフィアの影がちらつく。人違いだと言うモーテンセンだが…というスリラーの体裁を取っているが、時折見せる瞬発力のあるヴァイオレンス描写やエロ場面にクローネンバーグらしさが漂う。銀座の劇場は『ロード・オブ・ザ・リング』のヴィゴ様主演作とあって女性客が多かったが、辛口の描写と内容に仰天した人も多かったのではないか。クローネンバーグ&ヴィゴのコンビでは次回作『イースタン・プロミス』も傑作として挙げたい。


ワイルドバンチ(1969)
第一次世界大戦前の西部を舞台にした中年強盗団、彼らを追う元仲間率いる賞金稼ぎ軍団、メキシコの野党マパッチ将軍らの一党という三つ巴の激突を描いた、サム・ペキンパーの西部劇。初見は高校時代、故河野基比古解説の「木曜洋画劇場」だから、1時間近くカットされていた訳だ。後にトリミング版LD購入、ノートリミングLD購入、渋谷パンテオンでの東京ファンタスティック映画祭での長尺版鑑賞、となる。失われてゆく西部劇への挽歌という側面もありながら、時代遅れとなった男たちへの眼差しが温かくも辛辣だ。公開当時「死の舞踏」と呼ばれたスローモーションとモンタージュを駆使したヴァイオレンス描写は、初めて観た時に顔から血の気が引いた。現代アクション映画で多用されているスローモーションの使用方法の始祖と言って良いだろう(ペキンパー自身は『恐怖の報酬』からの影響を述べているが)。だが何よりも男達の顔・顔・顔だ。彼らのような顔の皺1つ1つに土埃がしみ込んだかのような顔を持つ俳優は、今のハリウッドには居ない。


殺しのドレス(1981)
近年はすっかり精彩を欠いてしまったブライアン・デ・パルマは、かつては大好きな監督だった。彼が脚本を書いた作品はどれもヘンテコだが、この映画はトリッキーな内容と、艶のある映像スタイルが幸福な結婚をした産物だと思う。当時のデ・パルマの妻だったナンシー・アレンのヒロインは男にとって都合が良過ぎる、頭も気も良い娼婦という役柄だが、彼女の代表作なのは間違いない。全体的にスリリングで非常に楽しめる。


ブラック・サンデー(1977)
トマス・ハリス小説の映画化作品は『羊たちの沈黙』が代表作なのだろうが、そのハリスの処女長編作を映画化したジョン・フランケンハイマーの本作は、筋金入りのアクション・スリラー。北米にて大量テロを目論むパレスチナ・ゲリラと、彼らを追うモサドの追撃戦を描いた大作だ。目的の為ならば手段を問わない登場人物たちの戦いを描いた本作、私自身は『羊』よりも大好き。構成にやや難のあるサイコスリラー小説を、よくもここまで娯楽たっぷりのアクションスリラーに仕立てたものだ。脚本家アーネスト・レーマンヒッチコックの『北北西に進路を取れ』やロバート・ワイズの『ウェストサイド物語』でも有名だね。パレスチナゲリラと日本赤軍を扱っているとあって、日本では夏休み大作予定が劇場爆破予告により上映中止となった本作。公開当時のチラシを持っているよ。幻の作品だっただけに、高価なVHSが出た時はトリミングされているにも関わらず、大興奮したものだった。後年、ノートリミングDVDを購入し、自宅ホームシアターで堪能したのだが、「午前十字の映画祭」の1本として横浜ららぽーとのTOHOシネマズにて鑑賞。何度も観ているのに劇場で観ると大興奮、且つ手に汗握るという貴重な体験をした。
…と、ずらずら書いてみたが、まだまだ他にもベスト映画はありそう。こういうのを書くのも楽しみ…ということで。他の方々のベスト映画というのも、知ってみたいものだ。世代によっても違うのは確実だしね。


以上は見栄っ張り無しに、心から大好きな映画を挙げてみた。たまにはこういうのを選出してみるのも、映画ファンの楽しみだったりするのだ。