days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

私的映画ベスト(3)


(承前)


恋におちたシェイクスピア(1998)
シェイクスピアを主人公にしたロマンティック・コメディ…といっても悲恋ものではあるが、トム・ストッパードの凝った脚本が素晴らしい。主人公2人をがっちり描きつつ、脇役達にもスポットライトを浴びせるのを忘れず、かつ史実も巧妙に混ぜ込み、シェイクスピア作品への目配せも忘れない。高揚感のある映像や音楽、豪奢な衣装、豪華なキャスト陣と見どころ聴きどころも多い。当時のアカデミー賞作品も今では余り評価されていないようだが、至福の時間を過ごせる傑作だ。


ヒート(1995)
俺様マン様の常に自信満々な男節監督マイケル・マンの最高傑作は『インサイダー』だとは思うが、それでもこれが好きだ。男が描けて女が描けないのもマンらしいが、アル・パチーノの強盗殺人課警部補とロバート・デ・ニーロ武装強盗団のライヴァル意識、狐と狸の化かし合いといった面白さもあるし、迫力満点のアクション場面もある。内容詰め込み過ぎで3時間弱と少々長いものの、異様な緊張感で最後まで引っ張る。中盤にある白昼のオフィス街での一般市民巻き添えの市街戦は、映画史に残る場面だ。


許されざる者(1992)
クリント・イーストウッドの監督作品は好きなものが多いのだが、1本選ぶとなるとこれか『ミリオンダラー・ベイビー』のどちらかになりそうだ。本作は『ブレードランナー』と同じくデヴィッド・W・ピープルズ脚本作。亡き妻を偲びながら子供2人を育てる元極悪人の老農夫。旧友に誘われて金の為に賞金稼ぎとして銃を手に取るが…という単純なプロットの西部劇に、捻った展開を多々用意しているのがイーストウッド好みらしい。暗い映像と内容だが、孤高の美しさに満ちている。今は無き渋谷パンテオンでの初見では、大画面いっぱいに広がる映像に息を飲んだ。


グッドフェローズ(1990)
劇場で見逃したのでLDで購入して観たマーティン・スコセッシのマフィア映画。フランシス・コッポラの『ゴッドファーザー』がオペラならば、こちらはロックンロール…とは言われるが、まさに対照的な作り。映画のテンポも速いし、男達の手も速い。暴力と恐怖と笑いがいっしょくたになって突き進む実録ギャング映画は、一般人の道徳観念が入り込む隙の無い異世界を垣間見せつつ、異様な興奮を持って突っ走る。初見は劇場で観たかった。後年の『カジノ』は大画面映えする映画で、こちらも大好きだ。


ザ・エージェント(1996)
キャメロン・クロウは大好きな脚本家兼監督だ。彼のベストは『あの頃、ペニー・レインと』だとは思うが、それでもトム・クルーズの本作も素晴らしい。これは前の会社の先輩・同僚と3人で渋東シネタワー(今の渋谷TOHOシネマズ)で、会社帰りに観た。先輩は涙を流していたよ。芝山幹郎が指摘するように、本作の特異さはその構成にある。ディケンズの『クリスマス・キャロル』のように、あこぎな守銭奴が最後は良心に目覚めてハッピーエンディング…というのがお決まりの構成。だが本作ではその結末を冒頭に持って来て、では主人公が良心に目覚めると現実社会ではどのような悪戦苦闘が待っているのか、という内容にしている。クルーズの大袈裟やり過ぎ演技をギャグにしてしまうクロウの才気も嬉しいが、名場面も多く、クルーズとレネ・ゼルウィガーの相性も良い。まだまだ苦闘が続くであろう彼らを応援したくなる。


(この項、続く)