days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

私的映画ベスト(2)


(承前)


○エイリアン(1979)
これは夏休みに叔母に連れられて弟と八戸の劇場で観た。小学2年のときだ。『スーパーマン』の後のハシゴだったのだが、こちらの方が強烈な印象を受けた(弟は疲れたのか、殆ど寝ていた)。全く怖くなかったものの、ノストロモ号の外観と内装のデザイン、異星人の宇宙船や異星人のデザインが忘れられなかった。2週間程、母方の実家に預けられていたので時間がたくさんあり、そうだ、と自前でわら半紙で新聞を作り、その中でこの映画の紹介をイラスト付きで書いたよ。今思うと、最初に書いた映画レヴューだったのかも知れない。手元には残っていないが、何を書いたのだろうか。終幕のシガーニー・ウィーヴァー下着姿が強烈だったのは確かだ。


ブレードランナー(1982)
『エイリアン』と同じくリドリー・スコットのSFハードボイルド映画。初見はお年玉で買った輸入VHSで小学6年の冬。もちろん字幕なぞない。それまで散々SF専門誌『スターログ』や中子真治さんの『SFX映画の世界』で紹介を読んでいたが、内容は殆ど理解出来なかったと思う。中学1年になって今は無き三軒茶屋東映の「リドリー・スコット+1上映!」という、『エイリアン』とジョン・カーペンターの『遊星からの物体X』との3本立てで字幕付きを初めて観て、内容を知った。名画座らしく劇中の雨だけではなく、フィルム傷の雨も降っていたものだ。映像やデザインは素晴らしいと思ったものの、辻褄が合わなかったりで、ご都合主義が目に付き、内容は余り評価出来なかった。それが覆ったのは、2007年の25周年記念ファイナル・カットだ。時代が追い着いたのか、いや私が追い着いたのか、内容は非常に理解しやすく、素晴らしい傑作だと思った。一緒に観た初見の妻も全く分からない事が無かったとか。やはり早過ぎた映画だったのかも知れない。


ロード・オブ・ザ・リング(2001)
ロード・オブ・ザ・リング二つの塔(2002)
ロード・オブ・ザ・リング王の帰還(2003)
ピーター・ジャクソンの野心溢れる10時間もの大長編は、3本で1本の映画だ。J・R・R・トールキンの『ホビットの冒険』は愛読書で、多聞小学校の図書室で幾度も借りて読んでいたくらいに大好きだった。続きがあると知って『指輪物語』を親に買ってもらったのが小学5-6年のとき。中子真治さんの『超SF映画』にもラルフ・バクシのアニメ映画版が紹介されていて、魔法使いガンダルフをフィーチャーしたポスター・アートに魅了されたのも理由の一つだ。だがこれは挫折した。幾度かトライしたものの、必ず第1部『旅の仲間』途中で投げ出してしまう。テンポが遅いだけではなく、とにかく読みづらい。登場人物が多いだけでなく、彼らを複数の呼び名でも書いてある為もあったろう。だが映画版公開前に読み直したら、すらすら読み進められたのだから面白いものだ。職場では幾人かで読んでいたよ。一種のお祭りだね。映画は原作の雰囲気とはかなり違っていたが、大人向けのハイ・ファンタジー超大作に仕上がっていて、素晴らしい。幾多もの重層的なテーマも面白いが、アクションも友情も胸を打つ。ラヴストーリーはイマイチなのもジャクソンらしいが。時々、この異形溢れる中つ国に戻りたくなる。旅の仲間に再会したくなる。


○チャイナタウン(1974)
初見は中学2-3年の年末年始の深夜映画放送番組だったか。1930年代のL.A.を舞台にしたハードボイルド・ミステリは雰囲気たっぷり。ミステリとしての面白さで引っ張り、観客は私立探偵J・J・ギティスと一緒に富豪一族の忌まわしき闇を覗き込む事になる。ロバート・タウン一世一代の脚本に、ロマン・ポランスキーの演出、ジョン・A・アロンゾの撮影に、ジェリー・ゴールドスミスのやるせない音楽。ジャック・ニコルソンフェイ・ダナウェイジョン・ヒューストンと役者も揃っていた。フィルム・ノワールとしてもベスト1だ。後年、ノートリミングのLDを購入し、その素晴らしい映像美を堪能する事になる。


L.A.コンフィデンシャル(1997)
日本公開は配給会社がワーナーから日本ヘラルドに変わったとかで、翌1998年夏になり、独身最後に観た映画となった(一緒に観たのは今の妻で、入籍1週間前だった)。オールナイトで日比谷で観たが、上映終了後に拍手が起きていたのも印象深い。『チャイナタウン』とは逆にモダンな感覚で撮られた1950年代L.A.を舞台にしたフィルム・ノワールは、ゴールドスミスが音楽を担当しているのにあちらとは全く違う雰囲気。だがこの苛烈な男達の激突の描き方が、現代風でとても良かった。後にジェイムズ・エルロイの原作を読んで、場面場面は同じなのに筋が全く違っていて仰天したものだ。脚本家たちは素晴らしい脚色をした。ラッセル・クロウガイ・ピアースケヴィン・スペイシーと主役3人の描き分けも良い。


(この項、続く)