days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

乙女の墓


昨日から読み始めたジェフリー・ディーヴァーの『静寂の叫び』(A Maiden's Grave)、今日読み終わりました。文庫本で上下2巻の長編ですが、さすがページ・ターナー、あっと言う間に読み終わります。ディーヴァーの本は身体に悪い。睡眠不足になってしまいます。


↓ハードカバー版の表紙です
静寂の叫び (Hayakawa novels)


聾唖学校生徒を人質に立て篭もる、頭脳明晰・冷静沈着・冷酷非情な凶悪犯と、周りを取り囲むFBI・州警察らとの攻防戦を描いた本書は、傑作小説『ボーン・コレクター』を始めとする後のリンカーン・ライム・シリーズにも通ずる特徴が見られます。


警察内部への綿密な取材に裏打ちされたリアルな描写。冒頭から読者を引きずり込み、様々な人物たちの思惑が同時進行していき、次から次へと一難去ってまた一難、のジェットコースター感覚。ほっとするのはまだ早いとばかりの、あざといまでの最後の大仕掛け。読者サーヴィスを徹底的に意識した作風は、特に毎度ながら終盤のどんでん返しに賛否両論となります。確かにどんでん返しが安っぽさを加味しているのは否定出来ませんが、ここまで楽しませてもらえれば、娯楽小説としては相当に上出来でしょう。


実に映画向きの作風なのですが、『ボーン・コレクター』映画版などを観ると、映画化した際に緻密な情報が抜け落ちてしまい、魅力がかなり減ってしまうようです。ま、監督の腕前もあるのでしょうけどね。実際、殆ど死人の出ない小説版に比べ、大量の死者が出る『ボーン・コレクター』映画版は、スリルの点でもかなり小説に劣っていましたし。


秋の夜長に、スリル満点の警察小説を如何でしょう。