days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Atmic Blonde

Atmic Blonde
映画『アトミック・ブロンド』をミッドナイトショウ鑑賞しました。
ベルリンの壁崩壊前後、東西ドイツを舞台にしたスパイ・アクション映画です。
主演のシャーリーズ・セロンは製作も兼任でかなり力が入っていました。
映画は痛そうな肉弾戦が随所に炸裂します。
序盤は映像も音楽も(80年代懐メロだらけ!)で騒々しく散漫、と余り感心しなかったのですが、デヴィッド・リーチの演出は徐々にアクセルが掛かって来ます。
非情で入り組んだスパイ戦の話が面白くなるのです。
アクションでは、後半にある数分以上に渡るヒロイン対複数の刺客達との「殺し合い」場面は、延々と長回しで物凄い迫力と臨場感満点でびっくりさせられます。
アクション主体の映画と想像していたのでこれは意外でした。


セロンもこの手の「私タフなんです」な無表情で単調な演技に終始するかと思いきや、段々とボロボロになって行くに連れて人間味も出して来て良かったです。
在独スパイ役ジェームズ・マカヴォイも得体の知れぬ存在感で面白い。
セロンに近付くソフィア・ブテラも可愛かった。
懐メロ群の中ではデヴィッド・ボウイが「キャット・ピープル」など、目立っていたなぁ。

Hidden Figyures

Hidden Figures
映画『ドリーム』を鑑賞しました。
この映画、公開前から邦題でミソを付けた映画でもあります。
原題は「隠された数字」「隠された人たち」のダブルミーニング
内容は1960年代初頭、アメリカ初の有人宇宙計画であるマーキュリー計画の裏側で、実はNASAの黒人女性計算士たちが活躍していた、というもの。
それを20世紀フォックスは最初『ドリーム 私たちのアポロ計画』としましたが、アポロ計画ではなくその前の前のマーキュリー計画を描いているのに変じゃないか、とSNSで炎上。
数日後に副題が無くなり、単純に『ドリーム』となったお粗末です。
でもこの「ドリーム」だとネットで検索しても他にいっぱい引っかかるので、余り上手くない題ですね。
ネット社会ではもっと検索に引っかかる邦題でなければならないのに、時流を読んでいる筈の宣伝部がこの体たらくではなんともはや…。


さて肝心の映画は、米ソ宇宙開発競争を描いた傑作『ライトスタッフ』の更に裏側を描いたもの、と言って良いでしょう。
これが超面白い。
天才たちが目標に向かって進む姿を観るのは痛快爽快です。
人種差別と女性差別と戦いながら、毅然として前を向く彼女たちを応援したくなる。
本当に素晴らしい映画でした。
セオドア・メルフィという監督はまるで知らなかったのですが、ユーモアを交えながらがっちりとシリアスなテーマも描き、心に残る描写も多い。
特に広大なNASAの敷地内に1つしかないという有色人種専用トイレに、ヒロインである数学の天才 キャサリン・G・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)が劇中で幾度も幾度も往復するその執拗な描写が強烈です。
人種差別と女性差別という問題を現代のアメリカも抱えているのですから、今の時代に作られる意義は十分にあるのですから。


天才計算士タラジ・P・ヘンソンだけではなく、管理職を目指すドロシー・ヴォーン役オクタヴィア・スペンサー、エンジニアを目指すメアリー・ジャクソン役ジャネール・モネイらも良かった。
ヴォーンの上司役であるアル・ハリソン役ケヴィン・コスナーは、マーキュリー計画推進への執念が感じられ、その為には人種や性別ではなくその能力での人材起用を図る公平な人物としてカッコよく描かれていました。
キャサリンのボーイフレンド役マハーシャラ・アリは『ムーンライト』での好演も印象に新しかったので、やはりこちらも印象に残ります。


ライトスタッフ』でも目立っていたジョン・グレンはこちらでも目立つ描かれ方をされていて、『ライトスタッフ』を観ていて良かったと思わせる、これは秀作なのです。
機会がありましたらお見逃しなきよう。

Alien: Covenant

Alien: Covenant
リドリー・スコットの新作『エイリアン:コヴェナント』鑑賞しました。
前作『プロメテウス』と『エイリアン』を繋ぐ物語として位置付けられています。
『プロメテウス』が緊張感も無く退屈で3D効果も無く、酷くがっかりした映画だったので、今作も全く期待していませんでした。
ところが意外にも楽しかったのです。
単なる帳尻合わせ優先ではなく、娯楽度が高くて。


幾人かの登場人物は単なる記号でなく、きちんと描かれていたのも好印象でした。
特にアンドロイドを1人2役で演じるミヒャエル・ファスベンダーはすっかりスコット映画の常連ですね。
余程彼を気に入っているのが観ていて分かります。
また壮観で映像美満点なスコット作品は久々ではないでしょうか。
同時にシリーズで最もグログロな映画でもあります。
場面によっては『エイリアン』のセルフリメイクといった箇所もありましたが、過去の作品を総括したいという老境のなせる業でしょう。


音楽は『エイリアン』のジェリー・ゴールドスミスの流用がやたらと目立っていました。
ハリー・グレッグソン=ウィリアムズの他の映画音楽も幾つか使ってもいたみたいです。
これもまた、音楽に無理解なリドリーらしかったです。

この世界の片隅に on Blu-ray Disc

この世界の片隅に on BD
帰宅したら傑作『この世界の片隅にBlu-ray Discが到着していました。
Amazon特典の2枚組を注文したのでわくわくして開梱してみると…2枚組ってこういうことですか??
しかも特典ディスクは14分なんだぁ。
これにはがっかり。
ともあれ素晴らしい本編をまた観るべく時間を作らねば!


Wonder Woman

Wonder Woman
パティ・ジェンキンス監督の『ワンダーウーマン』は、友人と一緒にIMAX 3D字幕版と、家族と一緒に吹替え版で鑑賞した。
思いのほか迫力満点のアクションが続く大作で、純真な女の子が世知辛い世間を知って絶望しそうになるものの、愛を知って成長する物語だった。
ガル・ガドットの美しさが見ものの1つになっているくらいで、まさに眼福。
また中盤のノーマンズ・ランドでの大戦闘場面は映画最大の盛り上がりを見せてくれ、そこが本当に素晴らしい。
ドイツ軍からの機銃攻撃を盾で一身に受けて耐えるワンダーウーマンの描写は、物凄い迫力で感動的ですらある。
しかも2度目に観て気付きなどもあって楽しかった。


以下、ネタバレ。
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最後の戦闘前夜、ワンダーウーマンことダイアナとスティーヴ・トレバー(クリス・パイン)は結ばれるのだが、そこまで恋愛などの描写も無くあっさりしているな、と思っていた。
2度目に観てこういう意味では、と思ったことが。
スティーヴは戦争の申し子で、平凡で幸せな日常を知らない男だ。
ましてや恋愛も。
だから明日にでも命を失うかも知れないので、ダイアナは彼を抱いて「あげた」のだ。
そう考えればそれまで恋愛描写が無かったのもあっさり納得出来ようもの。


これはBlu-ray Discなどのパッケージが欲しくなる映画だった。

Dunkirk

Dunkirk in IMAX
クリストファー・ノーランの新作第二次大戦映画『ダンケルク』をデジタルIMAX版で観賞しました。
全編の殆どがIMAXおよび65 mmで撮影されているのが売りですからね。
Blu-ray発売時には画面比はどうなるのかな。


さて、名も知れぬ無名の若手俳優たちが無名の兵士たちを演じ、ただひたすら敵の包囲網から脱出し、生き延びようとする、異色の戦争映画でした。
敵兵のドイツ軍の姿が殆ど出て来ないし、台詞も極力廃して、徹頭徹尾スリルとサスペンスに満ちた体験を観客に提供しよう、という作りとなっています。
時を刻む時計の音と共に鳴り響くハンス・ジマーの重低音音楽も効果的。
いや実際、この映画では「音」がとても重要で、効果音と音楽が緊張感を高めていたのは間違いありません。


CG特撮ではなく現物主義のノーランの狂気と、新しい映画を作り出そうとする野心が結実した力作です。
マーク・ライランスケネス・ブラナーら、脇を固めるベテラン俳優陣も頼もしい。
大画面での鑑賞がお薦めです。

Stephen King's It

Stephen King’s It
写真は我が家にあるスティーヴン・キングの『IT』邦訳版です。
ハードカバーは私の、文庫は妻のもの。
それぞれ結婚前に買ったものです。
藤田新策の装丁が素晴らしい。


スティーヴン・キングの小説『IT』は学生の春休みに読みました。
超分厚いハードカバー2段組みの上下2巻!
内容は彼の『スタンド・バイ・ミー』+モンスターホラーの集大成といったもの。
とある田舎町で起きる怪異に、主人公ら男女7人が対峙することになります。
小説としてのスケールが大きいのは、彼らの少年少女時代と大人時代を交互に描いているからです。
喘息持ち、いじめられっ子、黒人、父から暴力を受ける女の子、肥満、といったはぐれ者の彼らが、出会い、結束し、悪と対峙します。
子供たちは現実を知って大人へと成長し、大人たちは忘れていた子供時代を思い出していく。
それらがキングならではの鮮やかな筆致で活き活きと描写されていました。
濃密でありながら物凄いスピード感で読んでいて止まらず、睡眠時間と食事と風呂トイレ以外は文字通り読書だけの幾日。
ベッドに転がってい読んでいた私は、重いハードカバーに手が疲れて寝返りをうちながらも、間違いなく彼ら彼女らと共にありました。
「それ」と対峙するクライマクスは、子供時代と大人時代が同時進行して圧倒的迫力で突き進みます。
振り落とされないよう、私は懸命にページをめくっていました。
クライマクスだけで丸1日掛かったので、途中で母に食事に呼ばれて中断されるのが何と恨めしかったことか!
大盛り上がりの後に訪れる寂寥感もキングらしい。
そして子供から大人に成長する通過儀礼と、子供時代への惜別。
ラストは私が読んだ小説の中で最も印象に残るものです。


もしこの小説を未読で、それでも興味がある人がいたら、書店の文春文庫コーナーに行って手に取ってもらいたいです。
分厚い文庫本4冊にたじろぐかも知れませんが、一旦読み始めたら上質の小説だけが味あわせてくれる、喜びに満ち溢れた時間を過ごせるでしょう。
今からそんな体験をできるなんて、心から羨ましく思います。


再来月に日本で公開される映画版『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』は、昨日今日からアメリカで公開が始まりました。
例によってキング自身のお墨付きですが、この人は何でも褒める人なので信用できない。
と思っていたら、レヴューも上々、R指定にも関わらず興業的にもスタートダッシュを切ったようで何よりです。
映画版は少年少女時代のみを描くとか。
子供時代と大人時代が映画化に際して分割された為、小説の持っているテーマは恐らく消えているでしょう。
それでも劇場に駆け付けて観に行くつもりです。
また、今回の成功を受けて、早速大人時代版も企画がスタートしたということです。
将来、DVDやBlu-ray、もしくは配信版などで、原作同様に少年時代/大人時代が交互に描かれる版が編集されたりすると面白いですね。


IT〈1〉 (文春文庫)

IT〈1〉 (文春文庫)

IT〈2〉 (文春文庫)

IT〈2〉 (文春文庫)

IT〈3〉 (文春文庫)

IT〈3〉 (文春文庫)

IT〈4〉 (文春文庫)

IT〈4〉 (文春文庫)

IT〈上〉

IT〈上〉

IT〈下〉

IT〈下〉