days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Stephen King's It

Stephen King’s It
写真は我が家にあるスティーヴン・キングの『IT』邦訳版です。
ハードカバーは私の、文庫は妻のもの。
それぞれ結婚前に買ったものです。
藤田新策の装丁が素晴らしい。


スティーヴン・キングの小説『IT』は学生の春休みに読みました。
超分厚いハードカバー2段組みの上下2巻!
内容は彼の『スタンド・バイ・ミー』+モンスターホラーの集大成といったもの。
とある田舎町で起きる怪異に、主人公ら男女7人が対峙することになります。
小説としてのスケールが大きいのは、彼らの少年少女時代と大人時代を交互に描いているからです。
喘息持ち、いじめられっ子、黒人、父から暴力を受ける女の子、肥満、といったはぐれ者の彼らが、出会い、結束し、悪と対峙します。
子供たちは現実を知って大人へと成長し、大人たちは忘れていた子供時代を思い出していく。
それらがキングならではの鮮やかな筆致で活き活きと描写されていました。
濃密でありながら物凄いスピード感で読んでいて止まらず、睡眠時間と食事と風呂トイレ以外は文字通り読書だけの幾日。
ベッドに転がってい読んでいた私は、重いハードカバーに手が疲れて寝返りをうちながらも、間違いなく彼ら彼女らと共にありました。
「それ」と対峙するクライマクスは、子供時代と大人時代が同時進行して圧倒的迫力で突き進みます。
振り落とされないよう、私は懸命にページをめくっていました。
クライマクスだけで丸1日掛かったので、途中で母に食事に呼ばれて中断されるのが何と恨めしかったことか!
大盛り上がりの後に訪れる寂寥感もキングらしい。
そして子供から大人に成長する通過儀礼と、子供時代への惜別。
ラストは私が読んだ小説の中で最も印象に残るものです。


もしこの小説を未読で、それでも興味がある人がいたら、書店の文春文庫コーナーに行って手に取ってもらいたいです。
分厚い文庫本4冊にたじろぐかも知れませんが、一旦読み始めたら上質の小説だけが味あわせてくれる、喜びに満ち溢れた時間を過ごせるでしょう。
今からそんな体験をできるなんて、心から羨ましく思います。


再来月に日本で公開される映画版『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』は、昨日今日からアメリカで公開が始まりました。
例によってキング自身のお墨付きですが、この人は何でも褒める人なので信用できない。
と思っていたら、レヴューも上々、R指定にも関わらず興業的にもスタートダッシュを切ったようで何よりです。
映画版は少年少女時代のみを描くとか。
子供時代と大人時代が映画化に際して分割された為、小説の持っているテーマは恐らく消えているでしょう。
それでも劇場に駆け付けて観に行くつもりです。
また、今回の成功を受けて、早速大人時代版も企画がスタートしたということです。
将来、DVDやBlu-ray、もしくは配信版などで、原作同様に少年時代/大人時代が交互に描かれる版が編集されたりすると面白いですね。


IT〈1〉 (文春文庫)

IT〈1〉 (文春文庫)

IT〈2〉 (文春文庫)

IT〈2〉 (文春文庫)

IT〈3〉 (文春文庫)

IT〈3〉 (文春文庫)

IT〈4〉 (文春文庫)

IT〈4〉 (文春文庫)

IT〈上〉

IT〈上〉

IT〈下〉

IT〈下〉