days of cinema, music and food

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Solo

”Solo” poster
ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリーIMAX 3D字幕版をミッドナイトショー鑑賞しました。
傲慢不遜で守銭奴の密輸船船長ハン・ソロは、映画史に残る人気キャラです。
その男の若き日の冒険を描く映画は、撮影後半の監督交代騒動があったものの、まずは楽しい映画には仕上がっていました。
正直に言って鑑賞直後はどこか釈然としなかったのも事実ですが。


何と言っても最も注目されるのは、ハン役のオールデン・エアエンライクでしょう。
これが予想以上にハンでした。
ハリソン・フォードの演技のコピーはしていないのに、ハンの若き日と思わせる演技。
純粋な若者が色々と苦労して、ああいった頑固兄ちゃんになるのだろう、と思わせるだけで成功しています。
他の登場人物もキャラが立っていて魅力的。
ハンのメンターであるウディ・ハレルソンはハマり役。
ファム・ファタールエミリア・クラークは、日中に『ゲーム・オブ・スローンズ』を観ていたので、その差にびっくりです。
当たり前ですがこの人はスターではなくスター俳優なのですね。
そしてスター・ウォーズに珍しく、露出度ではなくともセクシーな女性キャラという、意外に画期的な役でもありました。
ランド役ドナルド・グローヴァーの陽気な胡散臭さは楽しいし、もっと観たいと思わせます。
自分で自伝を吹き込んで執筆しているなどケッサクです。
組織の顔役ポール・ベタニーも、如何にも冷酷で緊張感があって良かった。
出番でさらっていたのは新キャラのロボットL3-37。
彼女はスター・ウォーズで今までになかったキャラだ。声を当てているフィービー・ウォーラー=ブリッジの熱演も良い。
職人監督ロン・ハワードは大作よりも、むしろ小味なドラマの方が実力を発揮して来た監督ですが、この作品でも何より人物描写が活き活きとしています。


ローレンスとジョンのカスダン親子による脚本は、二転三転する展開は宇宙版小悪党物語として面白いし、アクションにも工夫がされていて楽しい。
特に前半にある列車襲撃場面は賑やかです。
スター・ウォーズ関連の小ネタを塗すのも忘れていません。
しかし終幕など、避けられない運命の対決とは言え、あっさり気味なのも確か。
今までのスター・ウォーズならば、同時に幾つも派手な大戦闘場面を並行させていたのに、これはそういった過去作品に比べると明らかに小ぢんまりとしています。
私も鑑賞直後はこれで良いのか、と首を傾げました。


そこではたと気付きました。
そうか、これはエルモア・レナードの宇宙版なんだ、と。
レナード…明るく陽気でお喋りな小悪党どもがうようよと登場し、物語をドライヴの掛かった変化球の如く展開させていた、犯罪小説の大家です。
軽快な語り口。
キャラが立った小悪党どもが知恵と度胸で騙し騙される。
そしてこれしかない運命の対決もあっさりとカタが付く。
ロン・ハワードの『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は、レナード・タッチのSF冒険活劇と考えれば合点が行きます。
ハワードがレナードを意識したかは分かりませんが、いささか重々しくなってしまった本家から失われてしまった、気軽に楽しめるSF冒険活劇の風味がこちらにあります。
これは中々捨てがたいものです。