days of cinema, music and food

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カメラを止めるな!

”One Cut of the Dead” poster
カメラを止めるな!』鑑賞。面白かった! 土曜午後のシネコンは満席という盛況ぶり。SNS中心に拡散されている話題作だものね。新宿で観られなかったので、近所で上映開始してありがたや。


この映画、あちこちで言われているように内容の紹介が非常に難しい映画である。何をしゃべってもネタバレになるからだ。予告編ですら観ない方が良いとまで言われているくらいである。取り敢えず「四の五の言わずに観てみて!」という映画なのだが、それだけでは伝わらないだろう。以下、微妙に内容に触れるので、全く予備知識なしに観たい方は読まれない方が宜しい。 『カメラを止めるな!』は、もし三谷幸喜に映画脚本家と映画監督としての才能があって、しかもゾンビを題材にしたら、こんな映画を撮っていたのでは?という娯楽作品だ。加速度的に盛り上がる集団劇の終幕には、身体ギャグと人物の名誉回復と成長と感動と綺麗なまとめがあって、そこら辺も三谷を想起させる。三谷映画との決定的な違いは、映画的リアリズムをちゃんと理解しており、それが映画の面白さに昇華されている点だ。


映画は3幕構成になっている。話題になっているのは37分間ワンショット長回しゾンビ映画パートだろう。ここは本当にワンショット撮影で行っているようで、スタッフもキャストもかなり頑張っている。間が抜けているのはご愛嬌だが、正直に言ってそんなに面白いかどうかは微妙だ。おまけに全編手持ちカメラの手振れ撮影で、私はあやうく画面酔いしそうになった。だが観ていて「?」「??」となる箇所が幾つかあり、これがまた後で効いて来る。映画が映画らしくなるのは2幕目以降だろう。ここでは丁寧な脚本と演出と無名の役者たちによる好演があり、脚本と監督をした上田慎一郎という人は中々の腕前だと思う。そして待ってましたの3幕目。ここで映画は一気呵成とばかりに畳みかける。この集団劇を上手くまとめる手さばきはかなりのもの。それまでの人物描写や伏線が効いて来て、劇場内は爆笑に包まれる。そして多くの観客は、登場人物らに対して内心で応援を送っていたに違いない。如何にピンチの連続を乗り切るのか!? 緊張と笑いが団子になって転がっていく様を見守りながら、各人たちの火事場の馬鹿力に声援を送りたくなる。場内が明るくなってから、あちこちで笑顔と笑いが起きていた。この一体感こそが、映画館で『カメラを止めるな!』を観る醍醐味だ。


超低予算の自主製作映画だからと言って侮るなかれ。この機会に是非、予備知識なしで観て頂きたい。お勧め。